今まで120くらいの仕事をしていて、還暦を機に、4月からその仕事が80くらいになったようなものなのだが、人間とは不思議なもので、今度はその80が何だか忙しく思えるようになってしまって、いやだいやだ、やっぱ60くらいがいいんだもんね…などと駄々をこねてみたりする。

 

そんな日々に幸あれ。

で、最近読んだ本の中から一冊をピック・アップ。


確か角田さんのスタートは純文学だったはず。
これを読むと、やっぱ角田さん、純文学もちゃんと書けるんだよなあ…などと思ってしまう。だからいわゆる角田光代さん的な面白さを期待するとね、ちょっと物足りないと思う読者も多いのではないかと…。

でも好きだなあ、個人的にはね、こういうの好きです。

なんつうか、〈信じる〉ということ。この点について掘り下げてゆく小説です。
こう書くと、何か〈信じる〉ことの大切さみたいな、暑苦しいテーマを思い浮かべがちかと思いますが、はい、全然違います。
〈信じる〉って、何なんだろう…ってことですよね。
〈信じる〉ことの恍惚と不安と…なんてね。

チェホフの「可愛い女」とか思い出しちゃうよね。
〈信じる〉って、人間の〈可愛さ〉なのかなぁ…なんて考える一方で、いやいやそんなふうに簡単に割り切られてたまるものかという気持ちもある。

そうそう吉行先生の短編に「流行」ってのがあって、その最後の言葉を引用して終わりましょうね。引用って言っても、もちろん一字一句覚えているわけでもないし、今さら足の踏み場もない我が家の書庫に行って吉行全集を引っ張り出してくるのも面倒なので、大体こんな感じの言葉ってことで書きますね。

「疑い続ければ、目的を失ってしまうかもしれない。それでも、疑い続けることをやめてはいけない」

角田さんの最新刊の割にはあまり話題になっていない感じもしますが、私は面白かったっすよ。話題にしたいっすね!