毎年のことながら春は本当に嫌だな。

職場でも、新しい人間関係とか、昔はそれなりに楽しみなところもあったのだけれど、今となってはもう面倒なだけだよね。

 

そんな日々も何か面白い小説、しかも長めの奴とか読んでいると、けっこう乗り切れるもんで、いやぁ、この小説とかもこの今の面倒な季節まで読まずに取っておけばよかったと思うようなところもあって、でもやっぱ面白いから読んじゃったんだよね。

 

 

ある世代はやはりアンジェイ・ワイダを連想してしまいがちなタイトルではあるが、ここは〈灰〉ではなくて、〈真珠〉なのだ。

 

バブル期の証券会社の社員とか、やっぱ正気の沙汰じゃなかったんだろうな。てか日本という国が正気じゃなかったということなのだけれど。

私の同級生とかも、そいつは証券じゃなくて不動産なんだけれど、入社してまもなくベンツとか乗り回しちゃったりしてさあ、あいつ今頃どうしちゃってんだろな?まさか井の頭公園あたりの池のほとりで…なんてね。

 

私より少し上のちょっとだけお姉さんお兄さんたちが主人公なのだけれど、あの時代の空気はよくわかります。

先日法事の後の食事の席、姉の思い出話の中で、私が新社会人の頃DCブランドのスーツを着まくりパンツまでアルマーニだったという仰天話を暴露したが、当の私はスーツこそ記憶にあるがパンツについてはまったく覚えがない。

一つだけ確かなのは、今の私が、さすがにもう買い換えろと妻があきれて言うくらいヨレヨレのユニクロパンツを穿き続けているということなんだな。

 

さて、この小説、もちろん面白いです。そしてもちろん救いようないっす。

だけど、なんか人間くさいんだよな。とくに望月ね。こんな奴今の時代にいたらホント迷惑で鬱陶しいんだろうけれど、あの時代はけっこういたような気がするね。そして周りもそこそこ許していたような気がする。

 

もう一つ、いくらでもエロいシーンが出てきそうな作品なのだけれど、そういうのはほぼ皆無というところがまた良いね。

あらためて思い返してみれば、あの時代、本当の意味でのエロは、実は希薄だったのではないか。とにかく人も世も軽薄だったからね。上っ面のエロさは蔓延していたかもしれないが、本質的にはあまりエロくない時代だったような気がするな。

書けばいくらでも書けそうな桐野さんが、あえてそういうシーンを書かなかったのは、そういうことなのかしら。

もちろん個人的な、あくまでも推測です。

 

にしてもこの季節、とにかく面白い小説で日々をごまかしていたい。

桐野さん読んじゃったからには、もう次はあの人しかいないかな。

 

M上さんね。(伏せる意味ようわからんが…)

 

上下巻ですよね。

発売そろそろですよね。

期待しています。