「お前いい根性してんな」
車から下りてきた先輩風の男が俺に声をかけてきた。
紺のスラックスにピンクのセーター、金のネックレス。
頭はパンチ、レイバンのサングラスをしている。
いっぱしのヤクザ気取りだ。
背は180以上はある。
細身だが威圧感があって堂々としている。
しかし、前歯が無い。
カズキといい、この先輩風の男といい、ここの不良のトップは歯が無いのが特徴なのか。
物腰穏やかな口調だった。
これはこの状況を打開するきっかけになるかもしれない。
俺は相手の出方を伺う事にした。
「お前、どこのモンよ」
「狛江」
千葉に仮住まい中の俺だったが、まだ地元意識はなかった。
下手に千葉なんて答えるとキリヒトに迷惑が及びかねない。
そして何より、俺にとっての地元は狛江だった。
「狛江?どこだそりゃ。聞いたことねぇぞ」
心の中で、クソが…と思った。
少年院でも、そして卒院後の千葉でも、そしてここでも、狛江という名前はあまりにもネームバリューがなかった。
十中八九、東京都にあると答えても信じてもらえない。
それが狛江だった。
「ヨソモンによ、好き放題やられたまま帰ってもらうわけにはいかねーわけよ」男は続けた。
不良界では当たり前の事だった。
俺はリンチを受け、この男達の狙い通り、ケジメを取られた形になった。
しかしカズキを返り討ちにし、気分的には負けた気はしなかった。
女たちの手前、これ以上やられる姿は見せたくもなく、このまま穏やかに事が済んで欲しいと思っていた。
先輩風の男もこれ以上大事にするような気配は見せていない。
「オウ!カズキ!いつまで寝てんだ!帰るぞ」
おお、神様…たまには俺の願いも聞いてくれるのね…そう思う言葉がその男から聞くことに成功したのだった。
しかし。
あの男の存在を俺はすっかり忘れていた。
男達が倒れているカズキを数人で抱え起こしている時に、その集団に向かってヤツが物凄い勢いで飛び蹴りで突っ込んで来たのだった。
男の名は、丹沢敦司…。
喧嘩の結末は、言うまでもあるまい。
~おしまい~
井口達也
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