「楽しかったし、お礼とか別にいらないよ」




美形のレンが答えた。




この流れは、普通に解散するパターンだ。




強引に流れを変えるしかない。




「別に俺ら急いでないし、軽く飲まない?」俺が言った。




すると太めのマイが怪訝そうな顔をして言った。




「あんたお金持ってないじゃん」




「うるせーブースブース!」心の中で俺は答えた。




「そ、そうだね」俺は平静を装って言った。




「敦司君おなかすいてない?」マイがあっちゃんに向かって言った。




「ぺこぺこー」あっちゃんが答える。




出た…キラースマイル…。




案の定マイがレンにアイコンタクトを送った。




「どうする?」という事なのだろう。




「ご飯でもいこっか」マイがあっちゃんに言った。




「いや、俺ら金持ってないからいいよ。そこまで甘えられないし」




「楽しませてもらったし、気にしないでよ。うちら敦司君の事気に入ったからさ」マイが言う。




おいおい、俺の名前が出てこねーぞと心の中でつっこみながらも、飯なんて回りくどい事言ってないでさっさとやらしいコースを楽しもうぜと思った。




「ねえレン、いいよね」マイが言う。




レンは「オッケーだよ」と答えた。




「…」あっちゃんがウルウルきてしまっている。




どこまで感情家なんだ。




「いい人だー…ほんといい人たちだー…」




「何!ちょっと!敦司君、泣いてんの!?かわいいー!」マイのテンションがまた上がった。




俺は聞こえないように舌打ちをした。




「ここからさ、あと10分も走ればファミレスあるんだー」マイが言った。




「マイちゃんも、レンちゃんも、ありがとね」あっちゃんが言った。




マイは照れた様子で、ぎこちなく微笑んだ。




「あっちゃん、せっかくだからマイちゃんを後ろに乗せてやったら?」俺が言った。




「え、え、いいよいいよ」マイがさらに照れた様子で答える。




俺は心の中で「ナイス俺!」と叫んだ。




絶妙なタイミングでのキラーパスだった。




これで分断成功。




そして俺はレンが運転する車の助手席へ。




「なぁあっちゃん、いいっしょ?」俺はダメ押しであっちゃんに振った。




「いいよー」




俺は心の中でガッツポーズをした。




その後照れるマイを半ば強引にあっちゃんの後部シートに乗せた。




気が変わる前にと思い、俺はその後すぐにレンの車に乗り込んだ。




ここからファミレスまでの約10分。




俺の真剣勝負が始まった。




~つづく~

井口達也



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