思いがけない女達の登場と、思いがけない言葉。
俺とあっちゃんは反応に困った。
これから喧嘩!
そんな心構えで居たものだから拍子抜けしたような、嬉しい誤算のような…とにかく言葉が出なかった。
運転席から降りてきたのは、長髪のアイドル顔の女だった。
髪は茶色で、アップにしていて色気を感じるいい女だ。
笑顔でこちらを見ている。
俺達を前にしても、どこか余裕を感じさせる。
細身のジーンズに大きな唇が描かれたTシャツを着ている。
一見普通の女だが、足元はレディースご用達の先が尖ったサンダル。
ヤンキー女だというのは間違いないだろう。
まず、ギラギラのマーク2に乗っている時点でゴリゴリのヤンキーだ。
助手席から降りてきたのはサングラスをかけた太めの女。
上下白のジャージで、前面に某有名キャラに酷似したネズミの刺繍がされている。
足元は、やはりサンダル。
「イタズラなら、ひき殺すよ?」今度は太ったほうが言った。
俺はようやく我にかえり、「いや、ちょっと困ってて…」と答えた。
「なんだよ」太った女が言った。
可愛いほうとは大違いの無愛想さだ。
するとあっちゃんがようやく近付いてきて、「ども」と言った。
太った女はあっちゃんの顔を見るなり、目が泳いだ。
チクショウ…やっぱ顔で態度変えんのかよ…と思った。
あっちゃんは色男だ。
「ガス欠で…」あっちゃんはさも困ったような顔と、声のトーンで答えた。
太った女がかわいい女に目でサインを送ると、二人で軽くうなずいた。
「スタンドならこの先3キロくらい行けばあるけど」太った女が言った。
「いや、お金が無んだぁ…あ、勘違いしないでねー。お金頂戴とかじゃないから」あっちゃんが答えた。
「あんたらどこの人?この辺で見ない顔じゃん」太った女が言った。
「俺ら千葉から遊びに来たんだけどね、財布無くすわガソリン無くなるわでさ…とりあえずどうにかなるかと思ってスタンドまで単車押してるとこ。10円でもあれば仲間に電話して来てもらえるんだけどさ」あっちゃんが言った。
「ふーん。レン!どーするー?」太った女がかわいい女に向かって言った。
どうやらかわいい方はレンという名前のようだ。
「マイの好きなようにしなよ」レンが言った。
太っている方はマイ。
「あ、俺ら敦司と達也」俺が言った。
しかし俺の言葉を無視するようにマイはあっちゃんに話しかけた。
分かりやすい女だ。
完全にあっちゃんに心が惹かれているようだ。
「この辺車通りあまりないけど、いつもここ走ってんの?」あっちゃんがマイに向かって言った。
「そうだよ。どうしよっかなぁ…暇だし、うちらと一緒に走ってくれたらガソリン入れたげる」マイが言った。
「なんだこのブス!ただで入れろよこのブース!ブース!」俺は心の中で叫んだ。
「一緒に走ろっか」あっちゃんが笑いながら答えた。
出た…キラースマイル!と思ったが、案の定マイはあっちゃんのキラースマイルにやられたようだ。
「ねぇ、レン!いいっしょ?」マイが言った。
レンは微笑んで小さく二度頷いた。
しょうがないか…という感じが出ていた。
まるで邪魔者の俺は、ちょっとスネ気味だった。
心の中で「ブースブース!」と叫んでいた。
同時に、レンに対しては下心が湧いていた。
上手くこの流れに乗って、ドライブ後にはどうにか関係を深められるかもしれないと期待した。
そしていざとなれば巨漢のマイをあっちゃんに押し付け、俺は美形のレンと…
そんな悪知恵をフル回転させながらレンとマイのリードに乗っかった。
ここは黙ってついていくしかない。
その後レンとマイは親身に動いてくれて、あっちゃんの単車のガソリンは満タンになったのだった。
~つづく~
井口達也
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