気がつけば俺は倒れていた。
すぐに目を開いたが、感覚がおかしい。
視界が揺れている。
どうやら俺は二階からの落下で脳が揺れてしまったようだ。
ドタバタと階段を駆け下りる音が聞こえた。
俺は福田先輩が追って来たと思い、本能的に立ち上がろうとした。
しかし思うように体が動かない。
どこか折れているのかもしれないと判断し、両手両足が動くか確かめた。
かろうじて動く。
しかしそこまで確認する頃には、もう俺の周りには仲間達が集まっていた。
どうやら福田先輩ではないらしい。
仲間達が口々に大丈夫かと尋ねる。
見たら分かるだろう。
大丈夫な様子は１ミリもない。
何箇所も打撲しているはずだ。
折れていないのが奇跡だ。
我ながら、二階から放り投げられて大丈夫な人間なんて見たことも聞いたこともない。
むしろ、二階から人を放り投げる人間がいる時点で何かがおかしい。
俺が舌打ちをすると、村上が俺を立たせてくれた。
「どこか折れてるって訳じゃなさそうだな」村上が言った。
俺は村上を押しのけ、自力で立とうとした。
村上が「頼むわ。落ち着こうや」と耳元でつぶやいた。
俺は観念し、村上の肩を借りた。
二階に上がり、話し合いを再開する事になった。
二階に上がると福田先輩が何ごともなかったようにボロボロのギターを弾いていた。
総長のエレキギターだ。
チューニングなんて当然合っていない。
それでも得意げにギターをかき鳴らす福田先輩。
その様子を見て、俺はやっぱり切れた。
福田先輩に会釈をして、謝ったふりをした。
そして、ギターをおもむろに取り上げると、そのまま福田先輩に向かってギターを振り抜いた。
バゴイーン！
福田先輩の額は切れ、血が流れた。
次の瞬間、俺はまた福田先輩に担ぎ上げられた。
～つづく～
井口達也
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