俺はヒサシの単車の後ろに跨った。
三段シートの後部座席だったので、ついつい体が勝手に動いてしまった。
「あ、言い忘れてたけど、今日近くで友達らがバーベキューしてんだわ」ヒサシが言った。
「那覇行こうぜ那覇」
「バーベキューにも女の子結構来てるはずだけど」ヒサシが言った。
「え…マジ?」
「マジよ」
「じゃあその方が…」
「ってことで、那覇に向かって出発ー!」
俺は心の中で、那覇まで行かなくてもギャルが近くにいるなら、その方がいいと思った。
ヒサシは俺が女好きだと分かってからかったのだった。
さっき食い気味に「那覇」と答えた事を後悔した。
単車は発進した。
思い切り後ろ髪を引かれる思いだった。
肉を食べたい。
ギャルも…。
そんな俺の下心をよそに、二台の単車はうなりを上げて進んだ。
道路はかなりすいていて、おかげで爆音が空によく響いた。
単車は大通りをさけながらどんどん那覇に向かって進んだ。
湿気が多い気がするが、やはり単車で風を切って進むのは気持ちが良かった。
ようやく大通りに出たと思ったら、遠くから直管マフラーの音がかすかに聞こえた気がした。
俺達の単車の音ではなかった。
少しずつ大きくなっていくその音は、一台のものではなかった。
何台かの音だ。
その音がはっきり聞こえてくると、タクミもヒサシも単車を止めた。
見ると二人とも眉間にしわが寄っていた。
~つづく~
井口達也
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※登場人物おさらい
井口達也(ヒッチハイクの放浪少年)
タクミ(単車乗りの沖縄少年)
ヒサシ(タクミの不良仲間)
ケンサク(敵対チームの総長)