ヒサシに促されてスタンドの裏手に回ると、そこにはロケットカウルで暴走族仕様の単車が一台止まっていた。



「へー。族やってんだ?」俺がヒサシに向かって言った。




「そんな大それたものじゃないけどね。何人か集まって走らせるくらい」ヒサシが言った。




「沖縄にも暴走族あんの?」




「あるよー。まぁ、ヤンキーが結構多いから、暴走族っていうより、ヤンキーが集まって勝手に暴走してるって感じが多いなー」




「へー。」




「達也は暴走族興味あるわけ?」




「まぁ、ちょっとだけ」




「ちょっと?」




「俺、暴走族とか怖いし。暴力嫌いだし」




「ふーん」




それを横で聞いていたタクミは呆れた顔をしていた。




「さ、せっかくだし那覇まで行こうか」タクミが言った。




「那覇はけーさつ多いからなぁ」ヒサシがぼやいた。




「達也はどっちがいい?この辺の田舎道カッ飛ばすのと、女の子のギャラリーがいる那覇を攻めるか」タクミが俺に聞いてきた。




「那覇」




俺は多少食い気味に即答した。




「じゃあ、那覇行くかぁ」タクミが言った。




「そういえばさ、今日ケンサク達、集会やってんじゃない?」ヒサシが言った。




俺は話についていけず、「ケンサク?」と言った。




「ああ、那覇ら辺の族よ。ケンサクって奴がトップなんだよ」ヒサシが答えた。




「ふーん。そのケンサクってのも友達なわけ?」




すると、タクミとヒサシは二人して首を振った。




「でーじ、敵」タクミが言った。




「じゃあ、行くしかないじゃん」俺が言った。




二人は「…だな」と答え、単車のエンジンをかけた。



~つづく~



井口達也


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※登場人物おさらい

井口達也(ヒッチハイクの放浪少年)

タクミ(単車乗りの沖縄少年)

ヒサシ(タクミの不良仲間)