※『チキン 第二部 狛江愚連隊篇』序章②
を読んでからどうぞ★
寒さで手がいうことを利かないので、両手でゆっくりジッポを開け、煙草に火をつけた。
フーッと一息煙を空に吐き、俺はみんなの顔を順に見まわした。
俺のすぐ横で両の手足を大きく開いて、ヤンキー座りしているのが狛江愚連隊一のロマンチスト、村上明人。
狛江南中の元番長で背丈は180センチ弱、一見細身だがゴツゴツした手を見ると筋肉質な体が想像できる。
整った顔立ちにふんわりしたワインレッドのショートツイストパーマ、右耳にピアスを七個も付けており、派手好きなのが一目でわかる。
特攻服を着ていないと暴走族には見えない軟派な風貌だ。
単車の運転ができないという弱点を衝かれてまだ拗ねているのか、目尻に貼った絆創膏を憮然としたまま剥がしていた。
その横で腕組みをして俺を見据えているのが森木隆。
俺と同じ狛江北中出身。
中学時代から俺とツルんでいる硬派な男。
170センチの俺より少し背が高い。
昔から気が利くうえにいつでも冷静な判断ができる男で、俺の右腕だ。
サイドを短く刈り上げて上部だけ金髪、ハードパーマのリーゼント仕上げ。
暴力的なヘアスタイルだ。
愛用の眼鏡にはヒビが入っており、咥え煙草をした口元は紫色に腫れていた。
森木の横で胡坐をかきながら羊羹を丸かじりにしているのが明人の後輩で洋菓子屋の息子、竹内幹。
ミキという響きは女みたいだが、パンチパーマに剃り込みを入れ、こめかみには縫った痕まであるコワモテのルックスだ。
森木と同じぐらいの身長だが、一〇〇キロ以上の巨漢。
気は優しくて力持ちの典型のような性格だが、喧嘩は愚連隊の中でも屈指の実力だ。
中三の時に狛江の全中学を制圧した過去もある。
そんな幹は鼻息を荒くして羊羹にかぶりついている。
左の瞼は倍ぐらいに腫れあがっており、見えているのかどうか怪しい。
俺と目が合うとニッコリ笑って食べかけの羊羹を差し出したので、顔をしかめて「要らない」と無言の返事をした。
いつものことだ。
最後の一人……太地が見当たらないので先に自己紹介。
俺は井口達也、狛江北中出身。
小学時代から空手と喧嘩に明け暮れて今に至る。
とにかく喧嘩にはとことん目がない。
あと女にも――。
頭は金髪のショートヘアをリーゼント気味に立てている。
俺たちは特攻服の上に、胸に狛江愚連隊と刺繍されたカーキ色のドカジャンを羽織り、足元は黒い安全靴を履いていた。
安全靴のつま先には鉄板が入っている。
ドカジャンの襟の毛はもちろん茶色だ。
こだわりがある。
宮国太地が、ガードレールの上をまるで綱渡りのように両手を広げて歩いてきた。
俺と背格好は似ているが、少し細身で童顔。
髪は真っ赤なサラサラヘア。
黒のライダースジャケットにジーパン、足元はボロボロの黒のコンバース。
手にはツバ付の黒い半帽型ヘルメットが握られている。
メットの横には府中昇龍連合のステッカーが貼られている。
俺と目が合うとニッコリ笑ってガードレールから飛び降りた。
「達也ぁ、エンジン冷えきる前に行こうぜ」と言って太地が単車のセルスターターを押そうとした。
「ちょっと待ってくれ。みんなによぉ、出る前に言っておきてーことがあんだよ」
俺がそう言うと四人の視線が集中した。
~『チキン 第二部 狛江愚連隊篇』序章④に続く~
(^井^)
「序章④がラストだよ。
23日にアップ予定!」
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