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アカシは首を傾げて
少し考えた様子だった。
「俺はまだまだだよ。
杉本さんか
白井さんだろ。
今は走りに集中しようぜ」
「分かった」
俺は黙って
後ろに跨った。
「やってよ」
アカシは背中を
向けたまま答えた。
「そん時がこねーと
分からねーよ」
「やれ」
アカシは振り向いて
ニコっと笑っただけ
だった。
「みんな準備いいかー?」
「ゥオッス!」
「新宿出たら
俺後ろ引っ込む
からよぉ、
帰りはおめーらの
走り見せてもらうわ」
「ゥオッス!」
「ほんじゃー行きますかー」
「ゥオッス!」
美咲を先頭に
愚連隊はゆっくり
走り出した。
公園から
多摩川住宅団地の
脇に出て、
桜並木が見えてきた。
美咲に続いて
もっさんと白井、
その後ろに愚連隊の
面々が続いた。
俺が乗ったアカシや
こてっちゃん、ノブオの
バイクはほぼ真ん中にいた。
そしてバイクは静かに
満開の桜のトンネルに
入った。
嵐の前の静けさとは
きっとこの事を
言うのだろう。
バイクはアクセルを
吹かす事もなく、
桜に送り出されるように
住宅街を抜けた。
品川街道に入ってすぐに、
美咲が左手を挙げた。
すると二台のバイクが
美咲の前に出た。
そしてそのバイクは
先にある交差点まで
一気に加速して
交差点に進入した。
いわゆる信号止めという
役割のバイクだった。
それを合図に
したかのように
ついに愚連隊は
暴走を開始した。
次回
夜桜が舞う(79)
へ続く