映画ドロップ公開中!

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観てない人は絶対に観てくれぃ!

井口達也ブログCHICKEN~ドロップ・ゼロ~-映画ドロップ


白井が
小包から
取り出したのは、
白い大きな
フォークのような
ものだった。

「パンチ用のクシだよ」

アカシが
俺に耳打ちをして
教えてくれた。

「色々あったけどよぉ、
今日は
美咲さんの
特別な日なんだよ。
一時休戦といこうや」

もっさんが
白井に語りかけた。

白井は無言で
クシを見つめていた。

「無くしたって言ってたろ?やるよ」


白井は
固まったままだった。

しばらくクシを
見つめた後、
白井はもっさんの
目を見て言った。

「…ああ。
集会が終わるまで
てめーとの喧嘩は
我慢してやるよ」

そう言って
白井はクシを
自分の
パンチパーマに差し、
拳をもっさんの胸に
ポンと軽く当てた。

もっさんは何も言わず
口元を
緩めただけだった。

「よっしゃ」

アカシは
小さな声を出して頷いた。


俺が白井の立場だったら…

素直に受け取る事が
出来たかは
分からない。


我を通して
生きてる者同士、
歩み寄ればいいものを、
変にプライドが
邪魔をして
それが出来ない事は
よくある。

格好悪い事だと
決め付けて、
反射的に
受け付けなくなってしまう
部分もある。


ただ、この時
二人の間に
あった壁が
崩れ落ちるのを見て、
俺は格好悪いとは
思わなかった。

引退集会に向けて
仲間が一つになった瞬間だった。


次回

夜桜が舞う(72)

へ続く