映画ドロップ公開中!

エンドロールの最後を
見逃すな!(^井^)

井口達也

ブログCHICKEN~ドロップ・ゼロ~-映画ドロップ



やっぱり何かやる気だ…

心の中でそう思いながら、
俺はわざと浮かない顔をして
アカシを見た。

「達也、秀樹、上着ちょっとかせよ」

俺はとっさにワン公を見て、
脱ぐなと言う代わりに
首を振ったが、ワン公は素直に
こてっちゃんから借りた上着を
差し出していた。

アカシは俺の方を向いてまた言った。

「達也、観念しろよ」

「やだよ」

「わりーようにはしねーからよ」

口では嫌だと言ってても、
アカシ達に遊ばれるのも
そこまで嫌いじゃなかった。

そういう状況を自分でも
楽しんでいたのかもしれない。

俺はしぶしぶアカシに借りた革ジャンを差し出した。

「よしよし。じゃあ後ろ向いてろ」

もうどうにでもなれと思って
言われた通りにしてみた。

後ろでガサゴソやってる音を
聞いていたら、改めてこの人達は
不思議な人だなって思えた。

何に対しても全力だった。

疲れるんじゃないかって程に。

小学生と全力で遊ぶ中学生なんて
俺の周りには
この三人を除いて知らなかった。

そんな感慨深い思いも、
三人の爆笑で吹き飛ばされた。

俺はたまらずに振り向いた。

そこには床に広げられた
二つの革ジャンがあった。

そして背中には、
はみ出す位大きな文字で
「美咲命」
と切り取られたカッティング
シートが貼られていた。

腹を抱えて転げるアカシ。

爆笑しすぎて
むせ返ってるこてっちゃん。

自分の作品に満足したのか、
満面の笑みでタバコをふかすノブオ。

この時ばかりは
遊ばれるのも嫌いじゃないな、
なんてちょっとでも思った事を
後悔した。

「俺、着ねーよ」

するとアカシが笑い過ぎて
苦しそうな顔をしながら答えた。

「大丈夫大丈夫!かっこいいって!」

そして言うよりも早くまた笑い出した。

いい加減頭にきて
カッティングシートをはがそうと
革ジャンに手をかけたら、
こてっちゃんが俺の腕を掴んだ。

「ばぁか、これがいいんだよ」

「剥がさしてよ」

するとこてっちゃんは
俺の手を掴んだまま
外に連れ出した。

そして自分のバイクの所まで来ると
手を離した。

こてっちゃんのバイクを見ると、
綺麗に塗装されたタンクに、
目立つように
「美咲」
と貼ってあった。

こてっちゃんの顔を見ると、
気恥ずかしいのか、
少し頬が赤かった。

もしかしてと思って
アカシとノブオのバイクを見たら、
同じようにデカデカと貼ってあった。




次回

夜桜が舞う(59)

へ続く