映画ドロップ公開中!

観た人は何度も観て、
観てない人は絶対に観てくれぃ!

井口達也ブログCHICKEN~ドロップ・ゼロ~-映画ドロップ


先に口を開いたのは

石岡だった。


「何で…知ってんだぁ?」


最初は何の事か

分からなかった。


アカシが聞き返した。


「何を?」


「知らねーのかよ?」


そう言うと石岡は

フっと笑い、

こてっちゃんに

もたれ掛かった

体を起こすと、

右手で空き地の方を

指差した。


俺達は石岡の

指差す方向を見たが、

空き地と、

その奥に

明かりが付いていない

家があるだけだった。


空き地の両脇は

シャッターが閉まった商店と

古いアパートだった。


「あれ、俺んちだよ」


そう言うと石岡は

吹き出すように笑った。


サイレンから

逃げるように

路地に迷い込んだ

俺達が着いた先は、

石岡の家の

真裏だった。


「マジかよ(笑)送る手間省けたな」


アカシが

タバコに火をつけた。


少しだけ場の空気が緩んだ。


そしてアカシは

自分の吸ってるタバコを

石岡に渡そうと

手を差し出した。


石岡は

差し出された手を

ぼんやり見つめ、

そして

アカシの目を見た。


緩んだ空気が

またすぐに

引き締まった。


数秒間の

沈黙があったが、

アカシは早く掴めと

言わんばかりに更に

前に手を伸ばした。


二人の間に流れる

何とも言えない

緊張感が

俺達を無言にさせた。


石岡は言った。


「勘違いすんなよ沼田ぁ。

約束、

忘れるんじゃねーぞ?」


「分かってるって。

良いから早く吸えよ」


アカシの言葉を聞くと、

石岡は

アカシのタバコを受け取り、

目を閉じて

ゆっくりと吸い込んだ。


空に

タバコの煙を

吹き上げる

石岡の目は、

何だか悲しそうに見えた。



アカシが差し出す

タバコには

いつでも

意味があった。


元気付ける時や、

和解の意味で

良く使っていた。


やっとその場の緊張感も

和らいだので、

俺は思い切って

聞いてみた。


「アカシとの約束って何?」


次回

夜桜が舞う(51)

へ続く