そういうとアカシは
バイクに跨った。

ハッキリとは
分からないが、
アカシが
仕掛けようとしている事が
何となく見えてきた。

「達也ぁ、
これから達也の
家までよぉ、
集会仕様の走りで
行くからよぉ、
ちゃんと掴まっとけよ?」

そこから家までは
景色なんて
気にする余裕は
一切なかった。

左右にうねって
進むバイクに
しがみついていた。

三段シートの
背もたれが無かったら
きっと何度か
振り落とされていたかもしれない。

ただ、
今までのどんな遊びよりも
緊張感と
刺激があったのは
確かだった。

問題があるとしたら、
バイクを下りた後の
吐き気だった。

俺は酔ってしまった。

アカシに笑われながら
俺は玄関を開けた。

「ただいまでーす!」

アカシが俺より先に
家に入っていった。

「あら、アカシ君」

母ちゃんだった。

「こんばんわ!
お父さんいます?」

「まだ帰ってないわよ。
今日はどうしたの?」

「いやー、
たまたま達也に会ったんで
遊びにきたんですよ」

「もうすぐ帰ってくるし
晩御飯食べてってね」

「はい!頂きます!」

母ちゃんは
礼儀正しいアカシの事を
気にいっていた。

「実は…
お母さんの料理
楽しみにして来たんです」

俺はアカシの顔を見た。

何故急に
母ちゃんを持ち上げたのか
分からなかった。

「あら嬉しいわ。今日はカレーよ」

「何か手伝いましょうか?」

「いいのよ、
もう出来てるから。
ゆっくりしててね。
達也、
アンタ何してるの、
早くアカシ君に
ジュース出しなさい」

母ちゃんは
完全にアカシに
担がれてしまっていた。

またアカシの顔を見ると、
小声で
「任せとけ」と言われた。

暫くして親父が帰ってきた。

へ続く