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「こらー!てめーらぁ!
ヤキソバ出来たっつってんだろー!」
俺とアカシは
話しに夢中になっていて
美咲の声が
聞こえていなかったらしい。
「ヤベェ!怒られる!」
アカシはタバコを
足で揉み消して
急いで中に入った。
アカシは
美咲の言う事には
素直に従った。
ただ、
あの何か企んでいる目からは
色んな事が想像できた。
何かやらかす気だ。
家の中に入ると、
テーブルの上には
大盛りのヤキソバが4つに、
小皿に少し盛られた
ヤキソバがあった。
「美咲これしかくわねーの?」
俺が言うと
美咲は俺を
下から覗き込んだ。
「あのなぁ、
俺は女の子なの。
分かる?」
「う、うん」
「分かったら食え!」
皆競争するように
黙々と背中を丸めて
食べていた。
美咲の料理は
相変わらず美味かった。
美咲は
2、3口食べただけで、
後は俺達が食べる姿を見て
満足そうな顔をしながら
タバコを吸っていた。
美咲がおもむろに
自分の皿を
俺達の前に差し出した。
「これ食っていいよ」
するとその皿に
二人の手が同時に伸びた。
こてっちゃんと
ノブオだった。
二人は美咲信者だから
どうしてもここは
譲れなかったんだろう。
お互いの手が
皿から離れる事はなかった。
二人が睨み合うと、
美咲は自分の箸で
二人に平等に
ヤキソバを分けた。
「仲良くしろよ。ったくよぉ」
そう言われた二人は
渋々納得した様子だったが、
美咲にもらったヤキソバを
一口で全部口に入れた。
それを見て
また美咲が笑った。
引退集会まで後7日。
俺達は
まだこの先起こる事など
知る由も無く、
いつものように
笑い合って過ごしていた。
次回
夜桜が舞う(23)
へ続く
へ続く