きっと俺に
気を遣ったんだなと思った。

何処に行くのか
聞こうとしたが、
バイクの音がうるさくて
俺は話しかけるのを諦めた。

徐々にスピードが上がってきた。

原付と明らかに違うスピード感だった。

視点が少し高くなったせいも
あるのだろうか、
まるで
空を飛んでいるかのようだった。

バイクを好きになる
美咲達の気持ちが
少し分かった気がした。

それより、
腕の中に簡単に収まってしまう
美咲の小ささに、
改めて
やっぱり女なんだなと思っていた。

目で見るよりも
ずっと小さく感じた。

カーブに差し掛かると
美咲はバイクを倒すように
身体ごと傾けた。

最初のカーブを曲がった時に、
美咲の体に
俺の体重が
かかるのが分かったので、
次のカーブからは
ステップを思い切り踏ん張り、
美咲の負荷にならないように
シートをももで挟み込んで
自分自身を支えた。

身を任せていたら
美咲の身体が
折れてしまいそうだと思ったんだ。

それくらい
美咲の身体を細く、
小さく感じていた。

暫く走って
美咲がバイクを停めた。

「なんだよやってねーじゃん!」

そこは
俺が一年の時に
親父と行ったラーメン屋だった。

「んー、どうしよっかなぁ…」

「別にラーメンじゃなくていいよ」

「バカモン!
飲んだらラーメンって決まってんだよ!」

「他にも店あるよ」

「ここがうめーんだよ」

「そっか…」

「よし!分かった!」

「店決まった?」

「他の店行くならよぉ、
俺が作った方がマシだよ!」

「え…どういう事?」

「俺んち行くぞ!」

「ちょっ…」

俺の返事を聞く前に
美咲はバイクを発車させた。

次回
へ続く