唐突な美咲の一言に
どう返事をしていいか
分からなかった。

「俺と遊ぶのは嫌か?」

悲しい目で見られた。
美咲とアカシが重なって見えた。

アカシに
悲しい目をされた記憶が
蘇ってきたんだ。

容姿や性格だけでなく、
俺への接し方までもが
美咲とアカシは似ていた。

アカシの悲しい目に
弱かったように、
美咲にも
弱くなってしまいそうで、
俺はこのままではまずいと思った。

「達也!何ボーっとしてんだよ?
レディからの誘い…
断る気かよ!?」

俺はハッと
我にかえって答えた。

「愚連隊を引き連れて
自分を俺って言うレディ(笑)?」

「そのへらず口は
どうやったら大人しくなるんだ(笑)?
キスでもしたら黙るか?
ン~」

そう言うと目を閉じて
キスをする真似をして見せた。

「分かった分かった。遊ぼう」

狼狽する自分を
誤魔化すように
そう答えるのが精一杯だった。

そんな俺の心理を
見破っているかのような
美咲の笑顔を見ると、
また少し恥ずかしくなってしまった。

「何して遊ぶ?」

少し落ち着きを取り戻した俺は、
そう聞かれて
腹が減っている事を思い出した。

「腹減った…」

「鉄矢の家で
弁当食ったんじゃねーのか?
鉄矢が電話で言ってたぜ?」

「何か食いてー気分」

「弁当足りなかったんか?」

「ビールも飲んだんだけどな…」

「あちゃー…それだよそれ。
ビールのせいだよ」

「なんで?」

「酔うとよぉ、無性に食いたくなるんだよ」

「そうなんだ?だから俺も腹が減った感じがするんだな…」

「よし!」

「なに!?」

「達也ぁ、
飲んだ後のシメにはよぉ、
お決まりのものがあるんだよ」

そういうと美咲は
バイクからメットをはずし、
俺に投げた。

そして美咲は
後部シートをポンポンと叩いて言った。


「達也ぁ!ラーメン行くぞ」


そこに居たのは
美咲の姿をしたアカシだった。
俺にはそう思えた。

へ続く