11月20日のNHK杯囲碁トーナメントでは、改めて囲碁の深さや醍醐味を教えてもらった気がした。
黒番の羽根直樹碁聖と新人王の白番村川大介七段の対局である。


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羽根碁聖の黒29がかなりの攻めっ気である。
しかし、ここで怯むようではNHK杯には到底出られない。
村川七段の白30が怪しくも隙あらば反撃の一手で、私などには思いもよらないカッコイイ手に見受けられた。


ならばと黒31と2間開きの肩につけ、更に黒12の石の横に一間に跳びつけての中央封鎖を狙う。
それに見向きもせず白32と中央に飛び出して白石を安定させた。
黒33の抑えは甘んじるものの、右上隅を白34と付けて一団の石を脅かす。


右上隅は、つけ引いてから更に白38とコスんで薄みを狙い、白40と黒17の石を切り離して、黒33の押さえで損をした分をいくらか取り戻した感じである。


更に中央を白42,44と跳ね出して切り離し攻勢を見せる。
中央での競り合いがこの碁の見せ場でもあった。


白52と黒を攻める気配に、黒の方も黒53から白石の退路を遮っての戦いである。
白64の一間跳びに黒は65と二間に跳んで寛いだかに見えたが、白は左辺を一本66と付けておいてから68のボウシである。


次の一手は当然中央を備えるものと見ていたら、何と右下隅から黒69の大ゲイマ締りであった。
ここで既に、中央は場合によっては捨てて打っても締め付ければ何とかなるというような見通しがあったようだ。


中央をまともに逃げていると、たとえ生きても左辺や下辺のあちこちにほころびが出るとの見立てなのだろう。


そして、そのとおり中央の石を逆に周りからの利きで締め付けながら黒123まで右下隅と下辺をまとめてしまった。


逃げ回ると足元を見られるが、逆に取ってくれと居直られると取らねばならない白の方も大変だ。
こんな打ち方の碁があるのは知ってはいたが、テレビとはいえ現実にダイナミックにお目にかかったのは初めてのような気がする。


全くすばらしいというか、手品を見ているようで、この碁が終わったあとも、しばらくは放心状態の様であった。
こんな碁の打ち方があるとは・・。


テレビでプロゴルファーの素晴らしいショットを見た後は、何となく素振りをしたくなる。
この碁を見た後、並べ直せないまでも碁を打ってみたくなったのは言うまでもない。