昔から先生に「あわてんぼう」と言われた。しっかり考えずにまず動いてしまう。

 

「用意□□」

□をうめなさいと問題があったら、われさきに「どん」と書いて怒られそうな子供だった。

 

そんな自分が半年も前から「用意周到」に準備してきた。さつまいも12株、その名はシルクスィートである。昨年は安納芋を大型プランターで育てて、コガネムシの幼虫と戦いながらもなんとか収穫した。今年は地植えで芋ほりがしたい。

 

 

指南本には2つ。とにかく肥料のない痩せた土を用意すること。そしてかまぼこ型の高畝をつくれとある。
 

高さ30cmの畝をつくるには、近くの土を30cm掘り下げなければならないが、狭いわが菜園ではできない。ならばと、プランターが並ぶ屋上テラスから、使用済みの土をバケツにいれて庭の隅に積み上げてきた。
 

バケツ50杯、バスタブにすれば2杯分ぐらいだろうか。工事現場のようになった一角は、つれに評判が悪かったが、美味しいさつまいものためだと繰り返した。

 

たまねぎとニンニクの収穫を終えたばかりのエリアに、素人菜園史上もっとも高さのある畝を3本つくった。両者にも3月上旬から肥料は与えていない。肥料分をすいつくした状態で採る計算だった。

 

さらに苗のそばには赤しそを植えた。これも求肥力の強い赤しそを一緒に植えて土中の肥料分を減らし芋の出来をよくするためだ。そして葉の赤色がコガネムシを遠ざけてくれるらしい。

 

苗の植え方も工夫した。垂直に植えると丸い大きな芋がすこし、斜めに植えると普通の細長い芋がたくさん採れる。垂直4本、斜め8本で出来を比べるのも楽しいだろう。

 

さて、できることは全部やった。
これから4ヶ月はほとんど放置でいいはずだ。秋が楽しみだ。

 

無事に苗が活着した10日後、ぼんやり眺めていて気がついた。

 

―あらら、マルチを張るのを忘れているじゃないか。

 

応用に気をまわしすぎて基本を忘れる、の典型だ。
 

トマトでもキャベツでもたまねぎでも張ってきたのになぜだろう。高畝が雨で崩れないように、雑草が生えないように、マルチは大事なアイテムだ。

 

マルチを張ってから苗を植えるのと、植えてからマルチをはるのでは手間が違う。後者だとどのあたりに穴をあけるか見当をつけてから張る必要がある。ひとりで作業するには‥‥厳しい。

 

やむなく晴れた休日の午前中、つれの協力をあおいだ。高くつきそうなのでそれだけは避けたかったがやむを得ない。苗を折らないように気をつけながらそっとマルチをかぶせていく。

 

―最初に張っておけばもっと楽にできたじゃない。ほんとあわてんぼうやなー。

 

予想された一言が、遠い日の記憶とだぶって耳に残った。