―お前は本当にその色でいいのか。

 

そう問いかけたくなった。

果物として種子散布の戦略上、常識は「赤」だ。
鳥や動物に見つけてもらい、なるべく親から離れたところまで運んでもらう。

 

ひと皮むけば白い果物は、ライチやアテモヤ、ドラゴンフルーツなど
南国系がうかぶ。日本ではナシやイチジクもある。

だがぱっと見で白い果物が思いつかない。
 

果物といえば赤、黄色、オレンジ、がほとんどで、緑や黒もある。
白い果物、何かあるだろうか。

 

テラスに出ると、風向きで急に甘い香りが漂ってくるようになった。
苗で冬越しさせた白イチゴ「白蜜香」の実が満開にむけて本気を出している。

 

 

イチゴケーキの香りみたい、とは、つれの感想だが、言われてみるとぴったりだ。

くやしいがちょっとうまい。

イチゴケーキみたいな苺、とは、焼き芋のようなサツマイモ、と同じで
「加工品のような原材料」という表現だから面白い。
苺感たっぷりのイチゴケーキ、が普通だがその逆だ。

 

この白イチゴ、鳥に狙われる心配がなくその点は安心だが、
白いままだと熟したかどうかどうやってわかるのか不思議だった。

 

イチゴの表面に無数に広がる粒点の赤が濃くなって
表面の色も真っ白から少しピンクがかかる。
色だけでなく香りも強くなる。
食べごろが五感でわかるようになっていた。

 

以前高級スーパーで桐の箱にはいった白イチゴを見つけたが、
なんと、ひと粒500円でびっくりした。

 

―うちのも立派に育てばそれぐらいで売れるかな?

 

じっと見つめていると、うん、見えてきた。

 

10円玉、50円玉、100円玉にまじりいくつか500円玉もある。

ワクワク。一度目をこする。

 

いや、わが素人菜園は、お金では測れない価値、を生む所なんだ。
そうだ。そのはずだ。そのはず…だ。

 

―お前は本当にそのスタンスでいいのか。

 

気づくと苺にそう問いかけられていた。