物を思はずは
一坏の
濁れる酒を
飲むべくあるらし
《大伴旅人》
巻三・三三八
しるしなき
ものをおもはずは
ひとつきの
にごれるさけを
のむべくあるらし
《おおとものたびと》
かいのない
物思いをするよりは
いっそう一杯の
濁り酒を
飲んだほうがいいようだ
大伴旅人は60歳を過ぎてから大宰府の長官として赴任します。これには、左遷だったという説もあります。
さらに追い討ちをかけるように同行して来た妻を亡くします。住み慣れた都を離れ、人生を共にした妻をも失い、孤独の中酒に救いを求めた旅人。妻を亡くした悲しみを読んだ歌も八首残しています。
