ここまで40局、Master先生の手に勝手に文句つけてたんです。
そしたら、なんと。
いや、当然、空耳だと思うんですよ。
でも聞こえてくるんです。Master先生の声が。
なんだか、会話が成立してるんですよ。
イメージは、なぜかダンブルドアの声です。
「 」は蛤碁石、『 』はMasterです。
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Master先生の黒番です。
「小目でスタート、珍しいですね」
『星と小目の組み合わせが最善、などと勘違いされたらいかんからの。ちょっと気をつかったのじゃ』
「やはり大ゲイマにシマルのですね」
『そうじゃよ。最初にワシが学んだのは小ゲイマジマリじゃったが、あれはどうもイカンな。隅に縮こまっていて、働きが乏しいんじゃよ。』
「コスミで受けるんですね。これは隅に縮こまっていないんですか?」
『何か勘違いしておるようじゃの。隅の地を守ったなどとは全く考えておらん。相手を攻める足がかりを作っただけじゃ。単に隅にシマるのと、かかりに受けるのとは全く別物じゃよ。そこには既に力関係があるでの』
「お得意のカケですね。左上隅を大きく地にしようと言うんですね」
『ふむ。わしゃそんな事は何も考えておらんわ。ただ、石の力を最大限に働かそうとしておるだけじゃ。弱い連中はすぐに地だ、方向だ、などと言いおるがの』
「左下、かかりっぱなしでしたからね。ここはどうサバクんでしょうか?」
『ん? 知らんな』
「やっぱり手抜きですね。」
『左下はまだ受けることも無かろう。それよりこっちじゃよ。ワシのカケに手を抜くとはの。無理せず受けておけば良かったのじゃ』
「あれ? 上辺への攻めは中断ですか」
『何を言うておる。ワシは単に一番大きな所に石を置くだけじゃ。どうみてもここが最大じゃろう』
「コスミツケられてやっと受けましたね」
『そうじゃな。何かと役に立ちそうな石だからの。まだ捨てるには惜しいのう』
「くー、格好いいですね。渡りとトビが見合いですね」
『格好いいとか悪いとか、まるで意味がわからんの。そこにどんな意味があるのかよ〜く考えてみるのじゃ』
「うわ、すごいツケが。」
『ふむ』
『これは白さん、苦しくなるのう』
「うわ、またツケが。プロっぽいなあ」
『ふむ』
『これでどうにもなるまいて』
「ああ、左上に大きく生きられちゃいましたよ。だから大ゲイマジマリは甘いって。」
『まあ、こんなもんじゃよ。地を取って、逆に苦しくなっているのは相手の方じゃ』
「出たー! 先生お得意の目ん玉に指ツッコミ。イタタタ」
『人聞きの悪いことを言わんでくれ。ごく当然の一手じゃよ』
「なるほど、左下隅が危ないですね。中に出てきたら左辺の浮石とカラミになる」
『言ったろう、苦しいのは白の方じゃと』
「白が左下隅に悔しい一手を入れたところで、上辺への攻めを再開ですね」
『うむ。しかし、これが上辺への攻めだけに見えるようじゃ、修行が足りんの』
「はい、右辺の地も見てるんですよね。」
『人間はすぐに地だとか言うのう。まだまだじゃよ』
「このタイミングでツケですか。この手はサバク側が打つ手ですよ。弱そうだった右下の白が強くなっちゃうじゃないですか」
『ん? 何か言うたか?』
「ほら、下辺の黒地は固まりましたけど、右下の白だって強くなりましたよ」
『そうじゃな。当然じゃの』
「ああ、ほとんど手止まりの右辺に白が開いちゃいました。これはさすがに損をしたでしょう」
『バカを言っちゃいかんよ。白さんにもお前にも、これから何が起こるのかが見えてないだけのこと』
「ツケ!」
「この手はまあ、左辺への攻めだけど。右辺のツケヒキはいったい?」
『まあ、見ておれ』
「攻めながら中に地が着いてきましたね。下辺のノビキリも立派だし、右辺のツケヒイた断点もややこしいし、完全に黒ペースですね」
『まだまだ、これからじゃ』
「上辺の白、余裕で大きな地を持ってますよ。2線にコスミです」
『ん!?』
『地は関係ないと、何度言うてもわからんようじゃのう、人間は』
「えー? なんで今ここを動くんですか? 左辺から中央の白を攻めてる最中じゃないですか」
『盤面は繋がっておるのじゃ。関係が無いようで実は関係がある』
「ぐはっ。これは先生、本気ですね」
『ん? 何がじゃ?』
「どうやら本気モード全開ですね」
『相手が手を抜くんじゃから、仕方なかろうて』
「とうとう切りましたね」
『うむ、白さん、下辺の黒1子を後手で取ったからのう。さすがに切るしか無いわい』
終局図です。
白が投了しましたが、数えると黒の4目半勝ちです。
「先生、勝因または相手の敗因はどこらへんでしょうか?」
『そんなもん、知らんよ』