あれから16年後の5月31日。15歳の舞花は幼稚部からの女子校生活に飽き飽きしていた。高校時代にバレーの選手だった純華とは対照的に娘は読書が趣味で夢見がちな性格。特に昭和末期のアダルト漫画と少女漫画にハマり〔いつか白馬の王子さまが迎えに来てくれる〕と無邪気に信じた。日曜なのでお部屋でゴロゴロしてると持て余し、気晴らしに外出。近くのスーパーでお茶とお菓子を買うと1階の集合ポストに目が留まった。安っぽい半透明のプラスチック製なので投函された郵便物が垣間見える。ソレはエアメールだったので初め彼女は〔きっとお母さんの恋人からだ〕と早合点した。ソレをお部屋に持って上がると消印は先日の雨で滲んでよく見えない。差出人はアイザックとイミュニクとあり、見覚えがない名前。勝手に封を切るわけにもいかず娘は母親の帰りを待った。ようやく純華がお仕事から帰ったのが24時。〔あら?まだ起きてたの舞花〕〔うん。お母さん、これ見て〕。彼女は驚いた。何しろ16年前に自分を孕ませたあの新米兵士からなのだから。お手紙によるとあれからアイザックは地元に戻り見合い結婚。だが勝気な妻と折り合いが合わず2ヶ月でスピード離婚。彼はひとり息子を引き取って男手ひとつで育ててきた。14歳のイミュニクにとって父親は英雄であり〔白鳥のジュンを初めて捕獲した男〕に他ならなかった。新兵器の開発に4年。なまめかしい黒革のコスチュームの製作に3年かけたとアイザックは告白した。〔純華を捕獲し育成する計画に2年を費やした〕と知り、母親は胸が熱くなった。〔お母さん大丈夫?〕〔?何が?〕。娘はほわっとした純華に呆れたが、2つ年下の息子さんのお写真を見てテンションが爆上がり。〔まるでしのざき嶺のアダルト漫画に出てくる気弱な子そのものじゃない〕。舞花は目を輝かせたが、今度は純華が呆れる番。〔あなたの好みはもうちょい年下の子じゃない?〕〔そ、そんなことないよ。イミュニクで充分だわ〕。この時点で美人母娘はアイザック父子に魅入られた。母親は年下の父親を文面を読んだだけでお変わりないと早合点。愛娘は添付されたお写真だけで息子さんを〔従順で素直な子〕に違いないと早合点。やっぱり血は争えないわね。〔純華は僕にとって永遠のビーナス。ぜひ君と再会したい〕〔舞花は僕の永遠のビーナス。ぜひこちらに来て君の雄姿を拝みたい〕。日本語は稚拙だが、彼らの熱が如実に伝わる。