◆言論YouTuberたち

1年ほど前から、大学時代のクラス会で耳にした、ある言論YouTuberのチャンネルを頻繁にみるようになりました。そのYouTuberの視聴をきっかけに、別のYoutuberの番組に誘導されるなどして、さまざまなYouTuberが、新しい情報やそれぞれのモノの見方、主張を展開しているのを知りました。いろいろ見ているうちに次第に自分の考え方や感じ方に合うものに絞られてきたようです。

 

そして最近ふと自分を振り返ると、自分の知識、あるいは日本や世界に対するモノの見方が、以前とずいぶんと変わっていることに気が付きました。テレビのニュース番組やYahoo!ニュースなどから構成されていた情報体系が崩れて、おおげさに言えば新しい世界観にシフトしたような感じなのです。

 

どんなYoutuberたちでしょうか。自分が登録しているチャンネルから列挙すると、下表のような人たちです。

 

政治家

原口一博、西田昌司、鈴木宗男(東京大地塾)

研究者・作家

藤井聡、伊藤貫、佐藤優(東京大地塾)

ジャーナリスト、アナリスト等

及川幸久(現在はXやニコニコ系で発信中)、石田和靖、深田萌絵、我那覇真子、佐藤章、やまたつ、水島総(チャンネル桜)

 

 この人々の活動形態はさまざまで、書籍や雑誌で活動する人、例えば佐藤優のようにYouTubeよりも活字メディアを主戦場にしているような人もいます。また、伊藤貫は自分のYouTubeチャンネルを持っているわけではなく、様々なチャンネルに出演することによってYouTuberとその視聴者に大きな影響を与えています。一方、及川幸久は、その言論が運営会社Googleの立場と相容れないことでYouTubeから追放されたため、現在は別のメディアで発信しています。YouTuberを本業とする人、別の本業のためにYouTubeを活用している人、活字メディアと複合的に言論を展開する人など、自らの個性に応じて活動形態を選び、それぞれがんばっています。

 

思想的にも、立憲民主党の国会議員である原口一博のようにリベラル左派に近い人もいれば、水島総のように保守色の強い人もいて、かなり幅があります。核をめぐる考え方の違いはその典型で、原口一博は北東アジア非核地帯条約を目指して議員活動を行っており反核に近い立場と思われますが、西田昌司・伊藤貫・水島総などは日本の真の独立のためには核武装が不可欠であるという議論を展開しています。

 

◆グローバリズムへの警戒

このようにこの人々の活動の仕方やモノの考え方は多様ですが、彼らの主張にはある共通性があります。それは頻出する用語で読み取れるのですが、「グローバリスト」に対抗しなければいけない、という一点です。

 

伝統的な言論を仕分けする枠組みとして、「左翼←→右翼」軸があります。しかし、上に挙げた人々には、右も左も関係なく、反グローバリズムという点で一致しているわけです。では彼らが対抗目標とする「グローバリスト」とは誰のことでしょうか。以下、これらYouTuberから聞いたことを手掛かりに、自分なりにまとめてみます。

 

「グローバル化」という言葉は決して負のイメージを持った言葉ではありませんでした。1991年にソビエト連邦が滅びて、アメリカを中心とする西側世界が勝利したと思われる時代を迎えますが、この時代を象徴するキーワードが「グローバル化」でしょう。ほぼ時を同じくして日本は衰亡の道に向かいますが、日本経済立て直しのフレーズとして「グローバルスタンダード」という言葉が流行します。事実、1990年代の終わりから2000年代の半ばにかけて、日本の企業法制はアメリカにならい株主至上主義とでもいうべきものに書き換えられました。これは誰が進めたものだと思いますか。私は、日米の政治的な従属関係をベースに、アメリカの投資銀行・資産運用会社などの金融資本が、日本で進めたものだと思います。2001年からの小泉純一郎政権で大活躍した人を思い出すとよいかもしれません。

 

日本だけでなく、お隣の韓国が1998年に通貨危機に陥り、IMFの管理下で有力財閥の解体をはじめとする経済制度の抜本的改革を強いられたように、世界中で株主至上主義の嵐が吹き荒れ、日本や韓国の多くの有力企業では、外資の持ち株比率が大幅に上昇しました。

 

近年では、コロナウイルスの流行とロシア・ウクライナ戦争の2つが、グローバリズムの事例として挙げられます。というか、この2つの世界史的大事件が、グローバリズムへの警戒を呼び覚ましたといえるかもしれません。いずれもごく最近の事件ですので評価が定まっていない面がありますが、次のようなことが指摘されています。

 

コロナウイルスのワクチンは、2019年末に始まったパンデミックへの恐怖を背景に、治験(医薬が承認されるためのプロセス)が不十分なまま世界各国に導入された。その後ワクチンを原因とする後遺症が多発した[1]が、製薬会社(ビッグファーマ)は莫大な利益を上げた。

 

ここまでは事実ですが、さらに現在進行形の問題として、ビッグファーマが、WHO(世界保健機関)に影響力を持つアメリカの財団等を動かしてWHOのルール改定を進めており、2024年5月に加盟国国民の主体的意思を奪うような体制を固めようとしているのではないか、とされています。

 

ウクライナ戦争については、日本国内の世論では侵略者ロシアを絶対悪とする論調が圧倒的です。これに対して、国際政治史の研究者である伊藤貫が言うのは、歴史をさかのぼって考えなければいけない、ということです。

 

アメリカは、1991年のソビエト連邦崩壊後、自由主義的改革をロシアで進めました。結果として、ロシアの富は海外に移転し、国民は経済的などん底状態に陥ります。さらに、アメリカは反ロシア軍事同盟であるNATOの加盟国を増やして、その領域を東側に拡張しました。そしてウクライナでは、2014年、国務省の職員がウクライナに乗り込んで反政府デモを背後で指揮し、合法的に選ばれた親ロシア政権をデモにより追い落とします(マイダン革命)。このようなアメリカの長年にわたるロシア潰しの試みが、ロシアによるウクライナ侵略を引き起こした、というのが伊藤貫の見方です。

 

さらにウクライナ戦争の経過において、次の指摘があります。2022年2~3月の和平交渉はいったんまとまりかけていたが、アメリカとイギリスがブチャの悲劇をクローズアップし、その機会を壊して[2]戦争が継続されることとなった。また、2022年9月、アメリカの工作機関は、ロシアからドイツへの天然ガスパイプライン「ノルドストリーム」を破壊し、露独の関係を断ち切った(国連による真相解明も拒否した)

 

つまり、「グローバリスト」とは、アメリカの金融資本、ビッグファーマ、軍事産業らの経済的支配者と、政府や情報機関らの政治権力との、人脈的結合を指すと言えます。歴史をさかのぼれば、1961年にアイゼンハワー大統領が退任演説でその存在に警鐘を発した「軍産複合体」と、2001年に始まるブッシュ大統領(息子)の時代に権力を握って政府を動かした「ネオコン」は、グローバリストの昔の姿になります。さらに、トランプ前大統領が敵として名指しした「ディープステート(DS)」とも同じとみられます。

 

◆ナショナリストYouTuber

上の表に挙げた人々は、そのほとんどがグローバリズムを指弾する人々ですから、仮にナショナリストYouTuberと名付けましょう。彼らの何人かには、もう少し具体的な主張においても共通の傾向が見られます。いくつか挙げます。

 

・消費税の減税ないし廃止(原口一博、西田昌司、藤井聡ら)

・コロナワクチン強制への反対(原口一博、及川幸久、深田萌絵、我那覇真子ら)

・対米従属への批判(原口一博、西田昌司、伊藤貫、水島総ら)

・ウクライナへの軍事支援に否定的(原口一博、伊藤貫、佐藤優、水島総ら)

・LGBTQの過度な権利主張への懸念(深田萌絵、我那覇真子、やまたつ)

・「今だけ金だけ自分だけ」の三だけ主義(原口一博、深田萌絵ら)

・反グローバリストとしてのトランプ大統領への期待

 (原口一博、及川幸久、深田萌絵、やまたつ、水島総ら)

・グローバルサウスへの注目

 (原口一博、佐藤優、及川幸久、石田和靖、深田萌絵、我那覇真子、水島総ら)

 

これらのテーマは、どのような統一的な像を結んでいるのでしょうか。例えば次のように言い表されるかもしれません。

 

アメリカのグローバリストは、民主主義や平等といった進歩主義の仮面をかぶって、世界共通の制度や価値観と称するものをアメリカ国民およびその従属国の国民に押し付けてくる。日本では、その分身や代弁者が政府の決定に影響を与えている。仮面に隠された真の目的は経済的利益、富の収奪にある。ナショナリストYouTuberはそのことを国民に向けて広く明らかにし、日本がアメリカのグローバリストの従属物の立場から脱却して真の独立を達成し、国民のための政治・経済を行うことを支援・実行しなければならない。

 

さて、ナショナリストYouTuberの近年のコンテンツで、私が感銘を受けたものをいくつかご紹介してこの投稿を終えたいと思います。どれか一つでもご覧いただけると幸いです。

 

【伊藤貫の真剣な雑談】第7回「文明の衝突とロシア国家哲学」[桜R4/6/25] (youtube.com)

 

【大晦日討論】日本、地獄の季節か?天国か?[桜R5/12/31] (youtube.com)

 

(602) 第23回日本の未来を創る勉強会 「消費税の本質を知る」講師 安藤裕先生 - YouTube

 

🆕佐藤優 鈴木宗男 🎙【クローズアップ現代延長戦。ウクライナ戦争の展望と小泉・真紀子時代の信じられない蔵出し話】 令和6年1月24日 (youtube.com)

 

WHOパンデミック合意あと4ヶ月 原口一博衆議院議員インタビュー(2/3)我那覇真子さんと対談 2024/02/02 (youtube.com)

 


[1] Yahoo!ニュースに載った揚井人文「コロナワクチン健康被害の申請1万件超に 20代以下の認定も1千件以上」(2024年2月3日)では、厚生労働省の発表をもとにして、日本での後遺症の広がりを次のように述べている。「新型コロナワクチン接種後の健康被害の救済申請を受理した件数が、今年1月末までに1万件を超えたことがわかった。6千件以上が接種による健康被害と認定され、約3千件が審査中となっている」

コロナワクチン健康被害の申請1万件超に 20代以下の認定も1千件以上(楊井人文) - エキスパート - Yahoo!ニュース

[2] 2022年3月29日のイスタンブールでの対面協議では、ウクライナとロシアの和平交渉団の間では基本的な合意に近づいた。しかし、首都キーウ近郊ブチャでの民間人殺害が明らかになり、アメリカのバイデン大統領やイギリスのジョンソン首相が、戦争犯罪としてプーチン大統領の責任を追及したため、それに怒ったプーチン大統領は交渉を打ち切った(東大作「ウクライナ戦争 ロシア撤退前の和平交渉」2023年1月6日、毎日新聞プレミア、など)。