先週、森万佑子『韓国併合』のことを書いたので、本棚のあちこちにある朝鮮・韓国関係の本を整理しました。ほとんど読まずに忘れていたものもあって、意外にいろいろ買い込んだものだなあと思ったものです。

 

 通史に近いものを刊行年の順番でリストアップすると下の通りで、思想的には左から右までバラエティーに富んでいます。一貫性がないともいえましょう。その時々に書店で目についたものを購入したようです。これらのほかに、韓国の教科書の日本語訳(明石書店)も何冊かあります。

 

著者

書名

備考

2002

名越二荒之助(編著)

日韓共鳴二千年史 これを読めば韓国も日本も好きになる

『日韓2000年の真実』(1997年)の復刊

2009

李栄薫

大韓民国の物語 韓国の「国史」教科書を書き換えよ

 

2012

呉善花

韓国併合への道 完全版

2000年刊行書の増補版。文春新書

2013

趙景達

植民地朝鮮と日本

『近代朝鮮と日本』の続編

2018

木村光彦

日本統治下の朝鮮

 

 

 『日韓共鳴二千年史』は、古代・近世・近代の日韓交流史をテーマとする700頁をこえる大著です。人にもらったものですが、その当時はアヤしい印象を持ち、読まずに本棚に直行させました。編著者の名越二荒之助は1923年生まれですから敗戦時は22歳、ソ連からの復員後は高校の教員を務めた人で、経歴から戦前戦中期の教育や経験がこの本のベースにあることがうかがえます。一見の印象として、私が受けてきた朝鮮半島についての歴史教育とは、かなり異なる思考・知識が満載であることが見て取れたため、入手した時は受け付けなかったのです。しかし今あらためて拾い読みしてみると、ほとんど伝えられなかった歴史的事実がたくさん盛り込まれており、日韓関係のリアルな姿を知るためにはこういう書籍がまとめられた意義は大きいと思います。

 

 『大韓民国の物語』の著者はソウル大学の経済学部教授であった李栄薫で、韓国で教えられている韓国史への問題意識から書かれた書籍の翻訳書です。通史というよりは、韓国で通説となっている近代史の問題点を論じたものです。この著者は2019年に日韓でベストセラーになった『反日種族主義』の編著者でもあり、その源流となった本と言えるかもしれません。

 

 『韓国併合への道 完全版』は、テーマ・対象時期としては先週書いた『韓国併合』とほぼ同じになります。著者は韓国出身のライターとして日本で執筆活動を始めた人で、歴史学者ではありませんが、自らが受けてきた歴史教育の内容に疑問を持ち、日韓併合における韓国側の要因を究明しようという動機から、この本をまとめました。日韓併合に至る時期の韓国側の事実経過が、詳しくまた読みやすく記述されており、その点でも有用です。

 

 『植民地朝鮮と日本』の著者は在日朝鮮人の歴史学者です(千葉大学教授)。植民地時代の朝鮮の政治、社会運動、文化・思想について、植民地支配に批判的な視点を軸に書かれたもので、特に日本の支配への抵抗を評価する視点が強く、社会運動史の詳細な知識を得ることができます。逆に、政治行政(朝鮮総督府の動向)と経済史関係が手薄に感じました。本書の前編にあたる『近代朝鮮と日本』を未読なので、『韓国併合』や『韓国併合への道 完全版』と読み比べてみたいと思います。

 

 『日本統治下の朝鮮』は、以上の書籍とは異なり、植民地時代の財政、産業、消費などの経済史についてまとめたものです。著者の木村光彦は東アジア経済論を専攻する経済学者(青山学院大学経済学部)です。韓国で行われている歴史教育で、植民地期の収奪、貧困化が強調されていることについて、その実証性に疑問を抱いたことが記されています。

 

 上記のようにまとめて気が付いたことですが、5冊のうち4冊に、韓国の歴史教育の問題点が指摘され、それが著者たちの執筆動機にもなっています。ひところ、日本の歴史教育が教科書問題として日中韓で大騒ぎになったことを思い出しました。