こんにちは！アイジェノミクススタッフです。まだまだ寒い毎日が続いていますが、自宅の植物が新芽を出し始めたりと、少しずつ春の気配が近づいているような気もしています。

さて、今年に入ってから、日本産科婦人科学会が着床前検査 (PGT-A/SR) の実施を正式に承認した、というニュースが話題になっています。アイジェノミクスのアメブロでも、前回その話題を取り上げました。

『着床前検査「PGT-A」、日産婦が正式承認』こんにちは、アイジェノミクススタッフです。新年もどうぞよろしくお願いいたします！さて、今日は先週末の連休中に報道された最新のニュースについて書いてみたいと思…

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着床前検査は体外受精・顕微授精で得られた受精卵（胚）の染色体を調べて、より妊娠する力の強い受精卵を見つける検査です。

一般には「着床前検査」や「着床前診断」という呼び名が浸透している印象ですが、公式な文書などでは「着床前遺伝学的検査」と記載されていますね。

着床前検査では胚が持つ遺伝子の情報を検査しますが、不妊治療を行う際の流産や着床不全を防ぐ目的以外には、遺伝情報を解析してはいけないことになっています。

・着床前遺伝学的検査を用いて出生児の性別選択を行ってはならない

・検査する遺伝学的情報は不妊症、不育症に関わる染色体異数性および染色体構造異常に限られる

その他にも、着床前検査の実施にあたっては遵守されるべき条件が細かに定められています。

さて、それらの条件が掲載されている『「不妊症および不育症を対象とした着床前遺伝学的検査」に関する見解』を見ると、着床前検査は「PGT-A」と「PGT-SR」に区別される、と書かれています。

これはいったいどういう意味なのでしょうか？

PGT、着床前遺伝学的検査

人は母親と父親からそれぞれ23本ずつの染色体を受け継ぎ、23対（計46本）の染色体を持っています。ですが、受精卵ができる過程で、染色体の数や構造に異常が起こってしまう場合があり、不妊や着床不全、流産の原因となります。

そして、このような胚の染色体に起因する着床不全や流産を防止するために実施されるのが着床前遺伝学的検査です。

着床前遺伝学的検査は、英語名ではPGT（Preimplantation Genetic Testing）とよばれます。PGTは、検査の目的ごとに以下の3つの種類に分かれています。

・PGT-A

Preimplantation Genetic Testing for Aneuploidy
着床前染色体異数性検査
⇒ 染色体の数の異常を調べるための検査

・PGT-SR

Preimplantation Genetic Testing for Structural Rearrangement

着床前染色体構造異常検査
⇒ 染色体の構造の異常を調べるための検査着

・PGT-M

Preimplantation Genetic Testing for Monogenic/single gene defect

着床前単一遺伝疾患検査
⇒ 重篤な遺伝性疾患を発症する恐れがあるかどうかを調べる検査

３つの検査はいずれも体外受精において、受精卵（胚）の外側の部分（胎盤へと成長していく部分）から細胞をいくつか採取しDNA情報を解析する、という手法で進める点が共通しています。

不妊治療には大変有効な検査ですが、ざんねんながらデメリットもあります。なかむらレディースクリニックの中村嘉宏先生が、妊活ラジオで大変詳しくご紹介くださいましたので、ぜひこちらの記事も読んでみてください。

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胚の染色体数を調べるPGT-A検査

PGT—Aは、胚の染色体の数の異常を調べるための検査です。日本語では、着床前胚染色体異数性検査とよばれています。

胚の染色体異数性は誰にでも起こっていることですが、発生頻度は母体年齢が上がるにつれ増えていく傾向があります。30代後半や40代の方では流産率が高くなるのはこのためです。

体外受精において2回以上続けて胚移植が成功しなかった方、流産や死産を2回以上繰り返した方のみを対象とした検査です。

染色体の構造異常を調べるPGT-SR検査

一方PGT—SRは、胚の染色体の構造異常を調べます。構造異常というのは転座や欠失、重複とよばれる現象のことで、染色体の一部が入れ替わっていたり、消失していたり過剰である状態を指します。

染色体の一部が入れ替わっている、と聞くととても大変なことのように感じますが、実は相互に入れ替わったり反転しているだけなら、その本人（親）の遺伝子の機能には問題は起こりません。

ですが、そのような染色体の構造異常をお持ちの方が子供をもとうとしたとき、受精卵はご本人とお相手の染色体を一本ずつ受け継ぐこととなりますので、欠損や重複が起きている片一方の染色体のみが受け継がれてしまうことにより、その受精卵の染色体は数が合わなくなってしまうのです。

染色体の欠失や重複を持つ受精卵は、多くの場合、出産まで成長を続ける力がありません。ご夫婦・カップルのいずれかが染色体構造異常をお持ちの場合に流産が起こりやすいのはこのためです。

加藤レディスクリニックの臨床遺伝専門医、黒田知子先生がインタビューの中で詳しくご説明くださっているので是非ご覧になってみてください。

もう流産はしたくない。妊娠することが怖い。そういう思いをしてほしくありません。私たちができること。私たちが目指すことを加藤レディスクリニック臨床遺伝専門医黒田知子先生にお聞きしました| 不妊治療情報センターもう流産はしたくない。妊娠することが怖い。そういう思いをしてほしくありません。私たちができること。私たちが目指すことを加藤レディスクリニック臨床遺伝専門医黒田知子先生にお聞きしました| 不妊治療情報センター

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重篤な遺伝性の疾患を調べるPGT-M検査

PGT—Mは重篤な遺伝性疾患を対象とした検査です。家系内に重篤な遺伝病患者をもつご夫婦・カップルが子供を持ちたいと考えたとき、PGT-Mを用いることで疾患に関連する遺伝子変異がお子さんに引き継がれてしまう可能性を回避することができます。

PGT-Mを希望する場合は、日本産科婦人科学会の承認を得る必要があります。日常生活を強く損なう症状が出たり、生存が危ぶまれる疾患であるにも関わらず、有効な治療法がないか、高度かつ侵襲度の高い治療を行う必要がある場合には、適応となる可能性があります。

日本産科婦人科学会が着床前検査の実施を承認

４月正式スタート！と報道されているニュース記事などでは主にPGT-AとPGT-SRのことが書かれています。

着床前検査に対する見解を改定施し、実施を認めた日本産科婦人科学会は、1月9日にPGT-AとPGT-SRに関する新しい見解・細則などを発表しました。

4月以降も臨床研究として実施されることは変わらないそうですが、いよいよ日本でも正式スタートということで期待が高まりますね。この研究によって、PGTの有用性についてもますます認められていくのではないでしょうか。

またPGT-Mについてもさまざまな整備が進められています。 PGT-Mの検査対象は、これまでは成人になるまでに発症する病気のみに限られていましたが、４月以降は成人以降に発症する病気も検査の対象となるといった改定が行われるようです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。着床前検査について、より深くご理解いただけたでしょうか。

アイジェノミクスのPGT-Aは、日本国内のラボで検査を行っています。「ミトスコア」という独自のスコアリング指標も導入しているので、検査結果にミトスコアの記載があった方は、「アイジェノミクスで検査されたんだ！」と思い出していただけると嬉しいです。

ミトスコアと形態学的評価｜胚盤胞の質を評価するための二つの手法｜妊活ブログ［アイジェノミクス・ジャパン］｜noteこんにちは。アイジェノミクススタッフです！前回に引き続き、なかむらレディースクリニック中村嘉宏先生をゲストにお迎えして、胚盤胞のミトスコア、形態学的評価について詳しくお伺いしたので、そのポイントをまとめていきたいと思います！「妊活ラジオ」は、FM西東京にて毎週日曜あさ10:00～放送中です！アイジェノミクス・ジャパンのYouTubeチャンネ…

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着床前検査（着床前診断）の「PGT-A」と「PGT-SR」、「PGT-M」はどう違うの？