一昨年の秋のこと。
仕事の集まりでどうしようもなく辛いことがあった。
それまで耐えてきたことの蓄積もあり、一人涙しながらつく家路の途中、上司に「休みます」と電話した(この日は月曜日で翌日も普通に仕事の予定だった)。
謂れのない人格否定を一身に浴び続けたこの夜の自分に、翌日出社することは考えられなかった。
翌朝、布団の中で惰眠を貪りつつ、初めてダウンロードした転職情報アプリに目を通す。
世の中にはこんなに求人があるんだなぁと思いつつ、力づくでもぎ取ったこの「ズル休み」をどう使おうかと考えたとき、「普段しないようなことをしよう」とふと思い立った。
しまいこんでいたミラーレスカメラを引っ張り出し、写真を撮りに。
鶴見駅。
ここから伸びる鶴見線と、接続する南武支線。普段乗ることのない路線で、普段取らない写真を撮る。いつもの自分から離れようと思って選んだのがここだった。
一瞬よくわからない路線図。
工業地帯を走る鶴見線は、行き止まりの多い三叉路線となっている。
最初の目的地、国道駅。
国道沿いにあるからという安直な由来の駅名。
外観自体はよくある駅なのだが…
入り口がやけに暗い。
ろくな照明のない中はもっと暗かった。
昔からの駅舎をそのまま利用していることもあり、その雰囲気から関東有数の「廃墟っぽい駅」として知られているそうだった。
コンコースには民家と思しき軒並みも。このうちのいくつかは、今でも人が住んでいるそうだった。
約30分の間隔で、次の電車がやってきた。
2つ目の目的地は浜川崎駅。
ここが鶴見線と南武支線の乗換駅となっている。
鶴見線の駅舎。実は同じ鉄道会社・同じ駅でありながら一旦改札を出なければならないという非常に珍しい構造になっている。
こちらが南武線側の駅舎。道路を渡った先にある。
幹線道路が駅の目の前を通っているが、それといった商業施設などはない。あるのは工場と中古車販売店と、ラブホテルが1軒。
夕方であったが盛んに工場が稼動していた。
鶴見線の線路にいた猫。
線路下に寝床があるらしく、行き来する様子が観察された。
40分ほどの散策ののち、帰路につくことに。
終業にはまだ早い時間だったせいか、2両編成の1両は自分以外誰も乗っていなかった。
家のそばの踏み切りに着くころには、もうすっかり日が傾いていた。
何もしたくなかったけど、何かしたかった1日。
少しだけ気持ちにも余裕が生まれて、これからの人生を考えるいい機会になった。
翌日は、部署の全員に菓子折りを持ってお詫びしながら出社したことは、言うまでもない。