どうせ愛されないし。
 
愛されてもいなかったし。
 
 
 
「もう、けんかはしないから」って言ったのに。
 
 
「もう、あやに悲しい思いさせないから」って言ったのに。
 
 
「ごめんね」って、言ったのに。
 
 
 
うそつき。
 
 
おとうさんの、うそつき。
 
おかあさんの、うそつき。
 
 
 
「もう、こわいおもいは、させないから。」って。
 
 
 
なのに、
 
なんで わたしを おいていったの?
 
 
 
うそつきは、きらい。
 
しんじた、わたしも、きらい。
 
きらいとおもってる、わたしも、きらい。
 
 
 
「心を入れ替えて
 
真っ当な道で、イチから、やり直す。」
 
 
 
ただ単に、そこに、
 
ちいさなわたしは含まれていなかった、
 
というだけのコトなんだ。
 
 
 
だから、うそつきじゃなかったんだ。
 
みんなが、ほんとうのことを、言っていた。
 
みんなが、ほんとうのことを、言おうとしていた。
 
 
 
ただ単に、
 
わたしは、お父さんの未来に

含まれていなかった、というだけ。
 
 
ただ単に、
 
わたしが勝手に期待してしまった、
 
というだけ。
 
 
 
それから、怖くなった。
 
 
 
それからは、
 
 
「ごめんね」も、
 
「もう、あやに悲しい思いさせないから」も、
 
 
「そもそも、わたしは
 
愛されてもいなかったんだ」ということを
 
思い知らされる、はじまりの合図になった。
 
 

「ごめんね」

「もう、あやに悲しい思いさせないから」
 
 
 
この言葉は、
 
しがみついていた
 
わたしのだいじな居場所が、
 
「そんな場所なんてそもそも無かったのだ」と、
 
思い知らされる、はじまりの合図になった。
 
 
 
どうせ愛されないし。
 
というより、そもそも、愛されてもいなかったし。
 
 
 
 
 
 
それが、
 
「思いこみ」だと気付いたのは、
 
何年も何年もたったあと。
 
 
今は、もう、目が覚めた。
 
 
 
目が覚めたはずのいまでも、
 
たまに、ごくたまに、
 
思い出して怖くなる時がある。
 
 
 
かろうじて、わたしは、
 
それがただの
 
「思い出し怖い」であることを知っているので、
 
 
布団にくるまって、
 
夢にうなされて、
 
怯えるくらいで済んでいる。
 
 
4~5日経ったら、目が覚める。
 
 
そんで、また、うとうとして、
 
ふたたび寝てしまって、
 
悪夢にうなされたりもする。
 
 
たまに、
 
やさしい人がビンタして、
 
起こしてくれたりもする。
 
 
 
そんな感じ。
 
だし、そんなモン。