今日は、早稲田大学マニフェスト研究所主催の自治体向け、働き方改革セミナーに参加しました。


【事例に学ぶ自治体現場の働き方改革(AI(人工知能)、RPA(ロボットによる業務の自動化)の取り組み)】


◆「自治体における働き方改革のあるべき姿とは」早稲田大学名誉教授、元三重県知事 北川正恭氏

行政も政治も、極論を言えば、人の営みも科学のテクノロジーで大きく変わってきた。

今後、AIやRPAも含め、世界はテクノロジーの進化により、否応無しに変わっていく。

年功序列、終身雇用から能力のある人が組織を回していく。

足を引っ張る事の無いよう、そういう時代にスムーズに変わっていけるように後押ししていきたい。



◆「自治体におけるRPA導入のポイント」㈱クニエ 増渕勝典マネージャー

・RPAとは

Robotics ロボットを使った
Process 業務プロセス
Automation 自動化

機械のロボットではなく、ソフトウェアのロボット

決まったルールに基いて、同じ作業を繰り返し実行

ヒトが普段使っている業務システムの操作画面の上で動作

既存の業務システムを改修せず、そのまま活用可能



・RPAの構成要素

RPAは基本的に定められたルールに則って一連の処理を実行。その処理の中で、画像/文字認識や音声認識、認識した情報の解析/データ生成において一部人
工知能(AI)技術が活用されている。


・RPAの効果

業務効果の向上だけでなく、正確性の向上、コンプライアンスの強化を目的としてRPAを導入するケースもある。

1)業務効率の向上

高い処理スピード、24時間365日稼働、人の手を使わずに作業できる、処理スピードが速くなる、夜間や休日でも作業できる

2)ノーミス

定めたルールに沿って、「正確」かつ疲れることなく「繰り返し」実行するため、入力ミスや手順の誤り等が発生しない。

3)コンプライアンス強化

業務プロセスの可視化、不正防止、属人的に行われていた業務プロセスが可視化される、人の手を介さないため、不正防止につながる。



・PRAに適した業務

一定のルールに基いて行われる業務 × 繰り返し、大量発生する業務 × デジタル化されているデータを扱う業務

(OCRはまだ、100%ではない。今後は、紙の書類をなくしていく。)



・RPA適用業務事例

つくば市:市民税賦課業務-申告書受付事務における回付文書作成事務

京都府:ホームページにおける「統計データ掲載ページ」と「オープンデータポータルサイト」の連携

宇城市:ふるさと納税業務

メールで申請を受けて、注文書で発注。12月に業務が集中。これが、パソコンの業務の全てをRPAに置き換えできた。


・自治体におけるRPA導入のポイント

1)現場職員の困り事にフォーカスする

2)小さく始める

3)人事・行革部門と情報システム部門が連携する。

日々の仕事で忙しい、新しいことをすることを嫌がる。



・RPA導入の進め方

RPAの可能性を検証していく方法

先進市などを参考にして適用可能性がある業務を選定する。(網羅的に行う必要なし)

困っている部署に対応する。

成功事例を1つでも、2つでも。ライセンスを購入して、全庁へ。

困っている人を助けるという視点が必要。




◆「つくば市におけるRPA導入の取り組み」つくば市 政策イノベーション部情報政策課 職員

働き方改革で残業時間を80時間までと言っても減らない。

結果、現場で優先度が低い仕事を減らしていくが足りず、最終的には、するべき仕事まで減らしていっている。


・RPAの導入

まず、全庁アンケートを行った。

課単位ではなく、一人ひとりにアンケートを行った。その結果、生々しい答えが返ってきた。本当の生の声が聞けてそれが良かった。

経験的に、RPAが導入できる業務は、ほとんど80%は時間の削減ができる。


・誰がRPAの仕組みを作るのか?

現場の担当者が作るのが一番良い。最初、作成した時は、1日半かかったが、今では、10~20分でほぼできる。最期まで仕上げるのに、1時間あればできる。

RPAに必要なスキルは、IT知識よりも業務知識を知ってることが大切。RPAは、やろうと思えば、IT知識より、業務知識が必要になってくる。

RPAは作成が簡単のため、エラーチェックができることが大切。


・RPAを導入するにあたって、

情報政策課 クソみたいな課

なんでもかんでもセキュリティという理由で止める。足を引っ張る。

RPAは、人に与えられているIDの権限の範囲内でしか、動かすことができない。

つまり、人がやっている作業を同じ作業しかRPAではできない。



・導入あたり、現場との調整

現場は、余計な仕事と思っているが、RPAの効果を理解してもらわないといけない。

現場にどんなメリットがあっても、理解されなければ、「余計なお世話」になってしまう。


また、得体のしれないICTへの不安がある。

RPAがどういう仕組みか分からないので、やりたくない。

パソコンが得意な人がいないから、使えないのでは…と思っている。


RPAを導入すると職員が減るのではという勘違いがある。

RPAの効果がでる現場は、そもそも人手不足の部署。

減るのは、今まで相当時間取られていた単純作業であり、本来職員がするべき、多様な市民ニーズに対応する業務に時間が割けるようになる。



・つくば市はどうしていったか?

RPAを用いた業務改善に対する、疑念や懸念に留意して、とにかく積極的なコミュニケーションを図り、丁寧なケアを行った。

課の仕事を実際にRPAで自動化。管理職に動きの説明をしながら見てもらった。実際に単純作業が一発で処理された結果を見れば納得してくれる。逆に応援
団になった。

人減らしの印象を持たれないように。

RPAは、人の一部の業務の代わりになるだけで、その人自身が不必要になるわけではない。



・つくば市職員の意見

経験則的に、400時間削減できれば、RPAのソフトを1つ買うことができる。

市民税課(16名)年間総労働時間 36,155時間

現在モデル 全5%がRPA処理可能 1,808時間(想定)

このうち約80%が削減可能。

結果、市民税課全体 年間労働時間 1,432時間(試算値)


将来的には、全体の20%がRPA処理可能 7,231時間(想定)

結果、市民税課全体 年間労働時間 5,727時間(試算値)





◆「AIによる自治体業務効率化の可能性」㈱エーアイスクエア 石田正樹 代表取締役社長

ディープラーニングは、第4次産業革命の1つだ!

これから、世界は、ディープラーニングを通して大きく変わっていく。

これは、必然だ。

日本は、先進国でGDPが下がっている国である。


また、労働生産性はG7の中で最下位である。

労働生産性を上げるためにも、AIソリューションの導入が不可欠である。

これからのイノベーションで、どんどん世界は変わっていく。

・次世代型コンタクトセンター(自動応対センター運営)

・VoC分析(ディープラーニング解析)

・新コミュニケーション(自動回答ツール)

・継続的なナレッジ構築(社内ヘルプデスク)



AIの学習効果により、運営コストを下げ、処理能力を飛躍的に向上。

例:徳島県の議事録起こし(デモンストレーション)

会見や会議の議事録がライブで文字起こしができる。

AIがライブで変換している。

今まで、知事の会見でも2人で2週間かかっていた作業が、1人で2時間で完成。

その日に、ホームページにアップしている。

速報性があるので、アクセスが2倍になった。

また、AIを活用すれば、文章を要約できる。

2時間半の会議も、AIが要点だけを抽出してくれる。必要な箇所を20%にまとめてくれたり、必要な分量にまとめてくれる。2時間半の会議も要点だけを
読むことができるようになった。



このAIの仕組みがあれば、AIへ300ほどのQ&Aを入れてやれば、勝手にAIが学習し、適切な回答を答えてくれるようになる。また、勝手に学習するため、
学習機会が増えれば、さらに正解率が向上していく。

現時点でこのシステムは、30万円/月。24時間自動が回答してくれる人を雇うことを考えれば、ペイできる金額で導入できる。

現在JTの電子タバコのQ&Aに、このAIが導入されている。外部からも試すことができる。




◆研修終了後、NTTAT㈱によるデモを見学した。

ソフトはwinActor。

実際にプログラムを組む方法を見せてもらった。

プログラムを組むというより、実際に行う作業を録画し、AIが画像認識技術を用い、プログラムへ変換しているようなものだった。

つまり、IT素人でも、実際に行う手順通りにロボットに覚えさせれば、RPAのシナリオが作れるようになる。

人がパソコンを通じて出来るルーチン的な作業はRPAで全てできるようになる。




<まとめ>

北川先生が言われたように、放っておいても、テクノロジーが我々の世界を変えてしまう。

それだけ、今のディープラーニングを含むAIソリューションは、革命的な事である。

人口減少、労働生産性が低い日本においては、移民の受け入れよりも、AIソリューションの活用をどんどん進めるべきだと考える。


宝塚市においても、社会保障関連の費用が、今後毎年10億円前後は増えていくだろう。

また、収入も人口減少とともに減ることはあっても、増えていくことは考えられない。

そんな中、働き方改革も含め、労働時間短縮、残業時間を減少させるためにも、単純作業をAIやRPAに任せ、人間は多様な市民ニーズに対応するための業務
に集中すべきである。

職員にとっても、単純作業に追われ、疲れ等からミスをするよりは、そういった部分をRPAに任せ、人はコミュニケーションを中心とする業務に特化すべき
だ。

宝塚市は、すでに民間力導入や、PFIなど、他市に遅れをとっている。

今回のAIソリューションにしても、後手になるのではなく、積極的に取り入れ、真の働き方改革を進めるべきである。

結果、それが市民満足にもつながるのである。



写真:つくば市の市民税課全体にRPAを導入した時の業務削減試算モデル