優勝を目標に掲げる川崎が辛うじてドロー。試合を通じて劣勢。川崎ファンは優しい。浦和ならブーイング物かも。

仙台の守備がとても印象的。イングランド風3列フラットラインの4-4-2。超コンパクトで、ボールサイドに寄せて中盤で挟んで密集を作って奪う。セットプレーディフェンスはゾーン。破綻がない。CB3番の駆け引き、1対1の巧さが印象的。バックラインからのマークに付くタイミングとカバーのタイミングはほぼ完璧。スペースを与えないフラットライン4バックと、戻りの速いフラットなMF。切り替えも速い。

でもこの暑さで、持って65分ぐらいだろうな、というスタイル。夏場はどうするつもりだろう?仙台だってそんなに涼しくない。関塚監督時代の川崎を思い出す。でも、この守備でなぜ17位??不思議。

仙台の攻撃。上記の守備スタイルのわりに、縦に速い攻撃が下手。後方2列がコンパクトなだけに、前線をサポート・追い越す動きがほとんどない。結果的にポゼスしてサイドを繋いでいく。前半はアーリークロスが多く見え見えだし中央に全く合わず、全く得点の香りがしなかったが、後半はFW#20が開き、サイド深くまで行ってからクロス、という形。20番と途中出場の9番は、ブッフバルト時代の浦和のポンテとワシントンにそっくり。だけど、20番はサイドに開くFW。ブレイクスルーを作れるプレイメーカーがいないのが弱み。

先制点は左サイドからうまく繋いだ。その方が確実性が高い。でも不思議なのは、その後、そのプレーを一度もやらなかったこと。

おそらく、守備を再建中でうまくはまり始めたんじゃないか。ただ、攻撃は今二歩で、たぶんホームで相手が引いた時に攻め手がなくなり、相手に流れを渡す、というパターンだったんじゃないか。それで守備もここまで構築できていなかったんだったら、17位もわからなくもない。

(仙台のスタイルはイングランドというよりも、中国代表を思い出させる。)

さて、問題は川崎。まだシーズンはこれからとはいえ、2位チームが17位チームとホームで戦っているとはとても思えない内容。全員がユニフォームを着間違えているんじゃないか、というぐらい。

守備。4-2-3-1。後半は4-4-2っぽい感じ。仙台ほどではないがコンパクト。でもMFsの戻りがちょっと遅い。バック4の前で相手にフリーで持たれることが多い。逆に、押し込まれるとライン吸収に近い状態になりやすい。取り所がなくなる。ファーも空く。(70'に先制点を許したのもファーからの飛び出しをフリーにしたことが原因。)仙台が特に前半はショットまで繋がることが少なかったので助かっていたが。

(後半の4-4-2は中盤での数的不利を、相手と同様のコンパクトさにして解消するためだったんじゃないかと想像するが、それで拮抗はさせたが、違いを作るまでには至らなかった。)

攻撃。実はポジション攻撃を期待していたのだが、守備の問題もあって、そんなに機能していなかった。こちらも速攻が下手。裏も狙ったが、仙台はうまくオフサイドを取っていたし、間延びもしなかった。特に前半は右サイドでビルドアップして押し込んで、中央に偏る。相手には密集があるのに…。ほとんどのプレーで#14中村を経由。ゲームメーカー兼プレイメーカー。全ての彼の狙いは極めてクリエイティブで面白かったが、ショットに直結するプレーを狙いがち。中央中心。左サイドなんか75分ぐらいまでに使った回数は数えるほど。前半はSBが孤立していた。

大久保が下がって受けたり、大島や中村がサイド最前線に張ったり、色々していたが、あまり合っていなかった。ただ、大島のイコライザー(72')は右サイド深くからドリブルで持ち込んだもの。でもでも、なぜか同じプレーを、トライすらしない。

案の定、60分を過ぎてプレスが緩くなってからゲームにアップダウンが生まれたが、2チームに共通して問題だったのは、相手が嫌がるような、穴を突く攻撃が少ないこと。穴を見つけたら繰り返しそこを突くようなことがないこと。(仙台は得点までは何度か繰り返したが、得点してからは皆無。)それはなぜかといえば、おそらく、「相手よりも自分たちのサッカーをする」という考え方に基づいているんだと思う。それはそれでもいいけれど、それが機能しない時に急に手詰まりになる。

川崎としては、バック4から直接裏を狙うプレーを前半のうちに繰り返して、何度も相手を走らせてもよかった。(1回しかなかった。)あるいは奪ったら一発で裏。パサーは狙っていたが、受け手があまり分かっていなかった。多くがオフサイドに引っ掛けられた。小林が消えていたのは象徴的。できれば横にも。中央に偏り過ぎた。

というわけで、内容を反映したドローだったけれども、タレント揃いの上位チームがホームで下位と戦い、信じられないほど主導権を握られ続け、負けに等しいドロー。しかし、にも関わらず、ファンは優しい。川崎ファンはもっと厳しく要求した方がチームのためにはいいと思うよ。

それと、厳しいことを言えば、Jリーグのクラブ全般にも言えるが、サイドのマークが甘い。遅い。タックルなど守備でのチャレンジも甘い。速攻が本当に下手。そしてそれも含めて、何より、ゲームの流れを見た展開が下手。なぜリードした終盤に(ポゼション目的でなく)リスクを取って押し込んで攻め急ぐのか??など。

大島「それだけチャンスが少なかった。もっと押し込めるようにゆっくり攻撃する場面も必要だった」・・・それはそうなんだけど、だからといって速く攻めていたわけでもない。問題は「押し込んで、同じようなやり方で中央を狙ってばかりいた」こと。ゆっくりというか、横にも揺さぶらないと。