On nOthing  -278ページ目

Summer wave #9 翔 1

「お、そろそろ着くぞ」と父さんは運転しながら言う。最新の物が好きな父は頭の回転が速いのか、いつも如才なく事を進める。助手席の母は眠りから覚めて、大きな伸びをした。

「あーやっとか。ねぇ将亮きてんの?」おじさんは面白いから来ているか気になった。

「あーあいつはきてんじゃねぇか。あいつ海好きだし。」

「なにそれ?」と母が聞いた。

「あいつ海好きだから毎年来るんだよ。」

「ふーん。じゃ来てるんだ」と少し嬉しくなる。

「あの人大丈夫なの?」目を擦りながら母は言う。

「さぁ、でもあの本は面白かったぞ。あの賞取ったやつ」父はウォッシャー液を出し、虫の付いたフロントウィンドウにワイパーをかけた。

「でもあれ大分前でしょ?」取った眼やにを見ながら母は言う。

「まぁな。なぁにあいつの事だなんとかやってるだろ。」と父は弟を庇う様に言った。

「え、将亮って本書いてんの?」あの人が本を書いてるなんていまいち信じられなかった。

「あれ知らなかった?将亮、大学の時書いた小説が賞取って、それで作家になったんだよ」

「へぇそうなの?どんなの?ってかそれ凄いよね」

「まぁ凄いよな。滅多にいない。だけど、お前も凄いぞ。日本代表なんだからな」と誇らしげに見てくる。いつもこういう時どうして良いか困る。

「で、どんな本なの?」

「あれは海の話だったな。うーん俺説明するの嫌いだから自分で読めよ」

「あっうん」父さんはそういう物臭なところがある。なんでも自分で調べさせる。おおまかな原理みたいなのを教えてくれ、自分で出来そうな事は自分でやれと言う。

「翔(しょう)あんな本読まなくていいのよ。だって今のあの人みたらだらしなくて見てられない。たぶんだらだらとした文で訳のわからない精神世界みたいなのが書かれている
んじゃない?大学生なんてそんなものでしょ?」

「おいおい。なんてこと言うんだ。それは偏見だって。それに賞とってるんだぞ」

「どっちにしても、つまらなそう」将亮を毛嫌いしているかの様だった。

「菜々(なな)読んでもないのそんな事言うのはどうなんだ?」そんな事を言いあっているうちにじいちゃんの家に着いた。


 


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