On nOthing  -261ページ目

短編小説 Wonderful One Wonder 1

仕事に行き詰まり、飲み物を買いに行く道すがらにいるその犬と良く話すようになった。

「お前、こんなところでなにやってんだよ?」と犬はどっかのおっさんみたいに話しかけてきた。その黒い犬は多分甲斐犬(かいけん)だ。柴犬や秋田犬と同じく天然記念物に指定されている犬のはず。

「こんなとこって?」とまともに答えてしまう。

「おまえさぁ、そこにオオアワダチソウ咲いてんじゃん。俺それ見てんだよ」と犬は俺の後ろの空き地に生えている黄色い花の方を見て言った。

「え?」馬鹿みたいに魯鈍(ろどん)な反応をしている。ちょっと待てなんで犬が喋ってんだよ。それに花なんてみてんだ?

「お前今なんで犬が喋ってんだよ?って思ってるだろ?お前さぁ、今何時代だと思ってんの?平成時代だぜ?犬が喋れば、アヒルも猫も喋るんだよ」犬は後ろ足で耳を掻きながら言う。

「えっ?いやだから」

「あーもう、うっせーなぁ」ワンワンと咆哮し、俺を威嚇した。

「なんだよ」とビクつくて、仰(の)け反る。

「あー、お前またここ通るだろ?そしたら、ちょっとあそこのパン屋から耳貰ってきてくれないか?」と何故かまたここを通る事を知っている。

あっ当たり前かいつも買い出しする時ここ通るもんな。なんて犬を擬人して考えてしまう。

「え、耳ですか?」全然意味が分からなかった。何俺敬語?

「そうだよ。食パンの耳だよ」

「はぁ」犬のお使い・・・。なんて情けないんだ。犬にまでも、と思ってしまった。

「じゃ頼んだぜ」と言うと犬は小屋に入ってしまった。





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