『SAKURAI社は全機能を回復させるまでに掛かる時間は不明と回答』



『アンドロイドの居場所を特定できなくなった持ち主は、直ぐに…カスタマーサービスへ御連絡を下さいと呼び掛け』



『防御システムの停止により盗難事件が発生する可能性を危惧するSAKURAI社』



何処かへ…去っていった彼女達の会話の内容を補足する様にブルブルと震えるスマホの小さな画面が今の状況を知らせてくる








「よくもまぁ…あんな事をした翌日に…平然と来れるね。何の用な訳?」

降りた車の側で立ち尽くす俺の背後から聞こえた声に振り返ると不機嫌さを纏った風間さんが近付いてくる。

「ニノにあんな事をする奴なんて客とは認めないからね。買い物とか言われても店内には入らせないよ」
「……ぁの…」

眉間に皺を寄せながら目の前へきた…風間さんの俺に対する怒りは分かるんだけど、収めてほしい。
昨日の事に関しては…ちゃんと、謝るから。

「にのは…何処?」
「は?」
「このお店に…きたでしょ?」
「そりゃぁ…仕事だから店内にはいるけど俺の目の前で手を出す様な奴が、簡単に、会えると思ってる訳?」
「貴方の恋人じゃなくて…アンドロイドのにの」
「…え?」

眉間に皺を寄せていた顔が驚いた表情へと変わり嫌な音を鳴らす俺の胸。

「アンドロイドの……?」
「この店へジグソーパズルを買いに行くと書いてある手紙が…」
「あのアンドロイドは……きてないけど……」
「…ぅ……そっ………」

風間さんの言葉に俺の口から溢れるのは震えた声。
此処にきてないのなら、にのは、何処へ行ったの?

「あの子って…SAKURAI社のアンドロイドじゃなかったっけ?」
「……そう…」
「もしかして…今……居場所、分からなくなってる訳?」
「………そぅ……」
「こんな時に…何をやってんの??信じられない。今…サイバー攻撃を食らったとかでSAKURAIのアンドロイドは主な機能が停止したんだろ?いつ回復するか不明な状態なのに…何をやってんの??防御システムも停止してしまったSAKURAIのアンドロイドは転売しようとする最低な奴等の格好の餌食になった事…分かってる?いつもなら数人の男が相手だろうと抵抗も出来るし心配はしなくても大丈夫だが今はそんな事…無理なんだよ。あの子は小さいのに、狙われたら、どうするつもりなんだよっ!!何処への通信も不可能になってるから誰の助けも呼べないんだぞ!分かってんの?」

主な機能が停止した事により…にのはどれだけ危険な状態なのかを風間さんに怒鳴られて震える俺の指先。

「…………どぅ………したら…」
「兎に角…あんたの家から店までの道を探すしかないだろ。あの子が心配だし見付けるまでは昨日の件を保留にしてやるからニノと会わせてやるよ」

俺の家からじゃないんだよ。
小さな子の足だと1時間は掛かる俺の勤務先から、にのは、此処に歩いて向かったんだ。
その途中に…SAKURAI社は初めてサイバー攻撃を食らってしまったんだろう。
俺の事は怒っているがにのを心配だと言ってくれた風間さんに手紙を見せた俺は居場所が分からなくなってしまった経緯を説明した。