色んな子から…にのちゃん!にのくん!!と呼ばれまくって過ぎる一日


ずっと…楽しそうに笑っているから眺める俺は幸せな気分に包まれて園児達を見守る


グラウンドで走り回る時も…眠くなさそうな顔をしながら、お昼寝する子と一緒に横たわっている時も








「まーくんせんせーとにのくん…さよーならぁ!!」
「さようなら!」

お母さんと仲良く帰っていく子達を見送ったら緑組の教室は俺達だけになってしまう。

「にのは、もう少し…待ってくれる?」

緑組の子達がいなくなっても俺には色んな仕事が残ってるので、直ぐに、帰る事は出来ないから退屈だろうけどにのにお願いをする。
成るべく、早く…終わらせられる様にするからちょっとだけ待って。

「まってるけど……お隣のおーちゃんのきょうしつへ遊びにいっちゃダメ?」
「あー……うーん…」

そう言えば…青組の子のお父さんから、急な仕事でお迎えに行けないと連絡が入り、当分の間は教室で一緒にいるんだと大ちゃんが言ってたな。

「いいよ」
「やったぁ!いってきまぁーす!!」

にのが行けば遊び相手も増える事になっていいかも?と思った俺は嬉しそうに緑組の教室から出て行く後ろ姿を見送った。
一人っきりになった俺は忘れ物がないか確認をしてから乱れた絵本の整理や床の掃除や明日の準備等…いつもより素早くパパッと残りの仕事を終わらせる。
にのの後ろ姿を見送って…1時間程たった頃に俺は大ちゃんの声が聞こえてくる隣の教室へ向かう。

「にの!お待たせ」

ガラッと扉を開けたら…視界の下の方で何かが落ちた。
だけど…それを気にする事が出来ないのは大ちゃんとお迎えを待つ青組のまりちゃんしか教室の中にはいないから。

「どうした?」

まりちゃんと塗り絵をしていた大ちゃんが不思議そうに首を傾げる。

「にのは…何処にいるの?」
「にのちゃん??」
「1時間程前…遊びにきたでしょ?」
「…えっ?」

開けた扉の向こうにいない時点で胸の奥が気持ち悪く揺れ始めた俺は、にのの後ろ姿を見送った時に青組の教室の中へ入る所は確認していない事を思い出したから耳に響いてくる嫌な心音。
直ぐそこの隣の教室だからと油断していた?
何故…俺の仕事が終わるまでにのを宜しくと大ちゃんに、直接伝えなかったんだよ。

「……きてないよ…」

心配そうな大ちゃんの声が胸に突き刺さる。

「これ…なぁに?おてがみ??」

塗り絵を中断して…まりちゃんが不思議そうに俺の足元を指差すので、下の方へと落ちる視線が見付けた二つに折られている白い紙。
仕事が終わったら俺に開けられる筈だと予想して青組の教室の扉へ挟まれたメッセージ。
二つに折られている白い紙を拾い、広げると、そこには…後で伝えるねと言われていた事が書かれていた。










幼い子が描く戦略は強い思いの所為



読んだ行動を先回りして手繰り寄せようと祈る無垢な心



恐れる事を知らぬ優しい思いに訪れるのは落ちる雫