「そう君!」
「まーくんせんせい…なぁに?」

グランウンドで遊ぶ不思議そうな顔のそう君を抱え上げると腕に伝わってくる体温は、いつもと違うからリアルに実感する、にのの凄さ。
そう君の表情から、特に具合の悪さ等は読み取れないのでにのがいなきゃ発熱に気付くのは、もうちょっと…後だっただろう。

「相葉ちゃん…どうした?」

そう君を抱え上げた俺の側に驚いた顔の大ちゃんが走ってくる。

「そう君、熱があるみたいなんだ」
「えっ!?」
「37℃になったと…にのが教えてくれたんだよ」
「えぇっ!!?にのちゃんが!?」

目を丸くしながら大ちゃんは胸ポケットに入っている職場のスマホを取り出し、操作する。
暫くすると、聞こえてくるのは発熱の事をご家族の方に伝える大ちゃんの声だったから、少しだけ…俺はホッとした。

「直ぐ…お母さんが迎えに来るって!そう君…ちょっとだけ、保健室で待とうね」
「ぼく…帰らなきゃだめなの?」
「そう君の体が…お休みしようと言ってるんだ。また…元気に遊ぶ為に、保健室で、お母さんを待とうね」
「はぁーい」

ちょっと…残念そうなそう君の頭をポンポンと優しく撫でながら宥める大ちゃん先生。

「教室の中にいてもグラウンドのそう君の熱を気付けるとか…にのちゃんは凄いな」
「距離があっても、にのには熱を測れる機能があるんだって」
「それなら…にのちゃんがいると俺達よりも早く体調の変化に気付いてあげられるな。ずっと…にのちゃんが緑組の子になってくれたら嬉しいんだけどな。でも…にのちゃんは正式に相葉ちゃんのアンドロイドじゃないから…それは無理なんだよな」
「あれ?2人で…どうした??」

急に…背後から聞こえた太一先生の不思議そうな声に俺達は会話を止めて振り返る。
事情を説明すると俺が抱っこしていたそう君に太一先生は両手を広げて…自分の胸へと移動させながら熱のある小さな体を優しい腕で包み込んだ。

「お母さんが来るまで…一緒に、待とうね」
「たいちせんせーが僕と…いっしょに待ってくれるの?」
「そうだよ」
「わぁーい」

俺達に背を向けた太一先生は保健室の方へ歩いて行くから俺達は、そう君の事を任せた。

「にのちゃんが…こっちを見てるよ」
「えっ?」

大ちゃんが指差した教室の方へ視線を向けると、にのは、嬉しそうに手を振ってくるから緩む俺の頬。
可愛い反応を見せてくれるにのは、大ちゃんの言う通り俺のアンドロイドじゃないから、ずっと、嵐幼稚園の緑組の子になるなんて無理なんだよ。
そんな事は分かってるし…早い内に、にのを作ったSAKURAIへ連絡するべきだと思ってる。

「こんな風に幼い子らしく楽しい時間を過ごさせてあげる為、俺は一緒にいるけど、ずっとなんて無理なんだよね。だから……」

にのに…後で伝えるねと言われた事を聞いてからSAKURAIに連絡しよう。
ちゃんと…にのにご褒美をあげたいから。
一緒にいられなくなるのは寂しいけど…いつまでも持ち主でもないのに俺が高価なアンドロイドの側にいる訳にもいかないから後で。








いつまでも楽しい時間が続くとは限らないのに呑気な考えで招く大失態



思う心は想定外に歩きだしてしまう事を気付けない



未経験の攻撃が足音もなく接近しているとも知らずに