急に…俺が連れてきたアンドロイドのにのを園児達は、どんな風に思うんだろうって、少しの心配もあったが杞憂だった事を直ぐに感じられる朝となったから嬉しくて堪らない


俺の側にいるにのを見付けると、誰もが興味津々に近寄って、あたらしいお友達をはっけん!!おなまえ…にのくんなのね!と教室の中は楽しそうな大きな高い声で溢れまくるから可愛らしい元気いっぱいな笑顔だらけになった


朝の挨拶で…にのをアンドロイドだと紹介すれば園児達からの質問は止まらなくなる



かけっこは早いの?


おえかきは上手??


おそらを飛べる?



幾つもの可愛らしい質問に答えるにのは、園児達から大人気で、心配する事など一つもなかった








「にのくんのなふだ…つるつるしてるね」

ある程度の質問が終わった後…色んな生き物を作る為に園児達へセッセと俺が折り紙を配っていたら、にのの隣に座る子が名札を指差す。

「でしょ?あさ…おーちゃんに貰ったばかりでまっさらなの」
「きれいで…いいな!あたしのは…幼稚園へいきたいと怒ったいもうとに噛まれたの。おこって歯形をつけるとか酷いよ」

にのの左胸に付いている名札をジロジロと眺めながら羨ましそうにする女の子は唇を尖らせる。
園児の不満が大きくなる前に小さくしなくちゃと思った俺は折り紙を配りながら、にの達に近付いていく。

「なふだを噛んじゃったのは…だいすきなお姉ちゃんと、いっしょに、行きたかったからじゃない?いもうとは怒ったんじゃなくて…おねぇちゃんの側にいれないことが寂しくてなふだを噛んじゃったんだとおもうよ」
「そうなのかな?」
「きっと…そうだよ!いっしょに、いたいから、つい…噛んじゃったの。だいすきって事だよ」
「そっか!あたしのこと、大好きだからだったのね。それなら、かんじゃっても仕方ないよね」

羨ましそうに眺めていた女の子の瞳は自分の左胸へと移動し嬉しそうに微笑むから、俺の出番はなくなった。
タッチパネルを器用に操作して…エラーを直すのとは訳が違うのに、ちゃんと、心も癒してしまうから凄い。

「まーくんせんせい」

女の子への優しさに関心していたら、突然…にのは立ち上がり、俺の側へと駆け寄る。

「どうしたの?」
「ちょっと…おねつがあるみたい」
「えっ!?しんどい??大丈夫?」

俺は持っていた折り紙を園児の机の上に置くと慌てながら、にのの額に掌を当てたけれど熱は感じない。
ホッとはしたが…俺の側に駆け寄ってくる程、しんどいのかも知れない。

「ぼくは…お熱をだしたりしないから大丈夫だよ」
「…へっ?」
「ぼくじゃなくて…青色のなふだを付けてるあのおとこの子だよ」

変な声を出してしまった俺は小さな額から手を退けて、にのに指差された窓の外のグラウンドの方へと視線を移した。

「そうってこだよ。ほんにんは元気そうなんだけど、いまさっき…37℃にあがった」
「……へっ??」
「どうして…さわれる距離にいないこの体温をにのがしってるの?みたいな顔は…なに??きょりがあっても僕には…ねつを測れるきのうがあるんだよ」
「………そうなんだ…」
「のこりの折り紙は…くばってあげるから、お熱のことを青組のせんせーのおーちゃん先生につたえて」
「分かった。教えてくれて、ありがとね!!助かるよ」

離れた場所にいる子の体温も測れるのは高性能なサーマルカメラみたいな物を搭載されているからなの?
詳しくは分からないけど人間じゃ無理な事も出来てしまう凄いにのに、感謝しながら、ぽんぽんとにのの頭を撫でた。

「どーいたしまして」

えへへっと頬を赤く染めて微笑むにのに見送られながら俺は教室を出て青組の子達が遊んでいるグラウンドの方へと走った。
朝から、にのに助けられてばかりだなって思った俺はピタリと立ち止まる。
チラッと振り返れば教室で折り紙を持つにのと窓越しに目が合って…急かす様にグラウンドの方を指差される。
また…急いで走り出した俺を見詰める赤く染まった顔は、本当に、嬉しそうに微笑んだ。