「タッチパネルに書かれた指示通りの操作はしてみたけど、ずっと…チェーンが下りたままで動かなくなったんだ」
立ち上がった太一先生はチェーンゲートのメインポールを指差す。
「これじぁ…困るから直してほしいんだ!お願い出来る?」
太一先生のお願いは…エラーをにのに直して貰う事だったからビックリする。
太一先生が操作しても無理だったんだよね?
それなら…にのにお願いしたって直せる訳ないんじゃないの?
「おっけー!なおしてあげるから…まーくん抱っこ」
「ええっ!?にのに直せるの?」
思わず大きな声を出して驚いたら…にのにムッと不服そうな顔をされる。
眉間に皺を寄せたにのは俺の方へと両手を伸ばすから抱っこしてチェーンゲートのメインポールの前に立つと可愛らしい小さな指先はタッチパネルをビックリする程…器用に操作していった。
「はい!なおったよ」
「早っ!!流石…ニノくんだね!」
「やっぱ…アンドロイドって…すっげぇ優秀だな!!」
にのの声と同時に下りたままだったチェーンは上がって…拍手をする大ちゃんと太一先生。
「あっ…朝の準備をしないといけないから先に戻るわ」
「本当だ!ニノくん…ありがと。直してくれたご褒美は…まーくん先生がくれるんじゃない?強請ってごらん」
ポンポンと優しくにのの頭を撫でた太一先生は大ちゃんと園の方に走って行くからユラユラと左右に揺れる小さな手。
俺だって朝の準備をしなきゃいけないから…早くしないと。
「ごほーびをくれるの?」
抱っこしているにのが意味ありげに…俺を見てくるからドキッと大きな音を鳴らす胸。
にのに…ご褒美と言われたら思い出してしまう昨日の自分がした最低な事。
「何か…欲しい物ある?」
心臓が軋む様な音を鳴らしているけど俺は聞こえない振りをして、にのに尋ねた。
出来る限りの平常心を装いながら。
「まーくんせんせーは忙しそうだから、あとで伝えるね」
「…分かった」
ニコッと可愛く微笑むにのは、真っ黒な瞳が左右に揺れる早さから、聞こえる筈もない音を探ろうとする。
触れる肌の温もりから。
軋む胸の奥から。