イライラ買いとまぁいいか買い(2) | 書斎で昼寝

書斎で昼寝

真っ昼間、書斎でのうたた寝ほど心地よいものはありません

前回の文章を読み返してみて、落ち着いて考えれば考えるほど、随分無理な買い物をしたなぁと、苦笑せざるを得ません。メンズライクなファッションが大好きだった私は、何より高身長に憧れ続けましたが、こればかりは努力とは無縁でどうすることも出来ませんでした。かと言ってヒールの高い靴で底上げするのは嫌だったので、仕方なくボーイッシュなファッションにこだわるのは諦めました。ただ、今でも女優さんは断然ショートヘアで背の高い人が好きです。

 

さて、洋服以外で、どうしようもない大物を買って困り果てた経験があります。

その昔東京で香港の大スター、レスリー・チャン氏の写真展がありました。写真集の発売を記念して、その中の写真をいくつかピックアップし大きく引き伸ばし額装したものを展示したのです。期間中会場ではどの写真が一番人気があるか、人気投票をしていました。その中でベスト5に選ばれた写真は、投票した人の中から抽選で各1名が「購入」出来る仕組みになっていました。もらえるのではなく、購入の権利を得るということです。会場は大盛況でたくさんの人が投票していたので、誰もがまさか自分に当たるとは思わず、気軽に投票していたように思います。そして、額になる前のポスター版が5枚組で売られ、当たるわけがないと思っていたからこそ、皆そちらを購入していました。

 

果たして...後日忘れかけた頃に係りの方から電話がかかってきました。あなたが投票した写真がベスト5に入り、あなたが購入者に選ばれました、と。そして驚いたことに、「本当に購入されますか?」と聞くのです。不思議に思ってよく聞いてみると、1枚4万円という値段に今更ながら後悔して辞退する人も結構いたらしく、それで私にお鉢が回ってきたのでした。つまり、その時点で私も「やっぱりやめておきます」と言うことは出来、相手も無理強いするつもりはないようでした。それなのに私は、一瞬迷ったものの、断ったら悪いかなぁと妙な遠慮をし、結局深く考えずに「はい、買います」と言ってしまいました。後日送られて来た作品は、広い会場で見るのとは違い、一体どこに置くの?な代物で、家族には適当な言い訳をして、送られてきたまま我が家の収納庫にひっそりとしまわれました。私は激しく後悔しました。後先考えず気軽に投票したことにではなく、いくらでも断れたのに断らなかった自分に対してです。

 

その後しばらくしてレスリーさんは亡くなり、レスリーさんのグッズはレアな物を残してすべて処分しました。一度も貼られることのなかったポスターと、封をされたままの写真額と共に。