スパイダーマンがビルからビルへ飛び移るシーンを観ると、あることを思い出します。

少時実家の家屋に、蝿捕蜘蛛が入ってきました。

蜘蛛が苦手な人は多いようですが、私は嫌いません。私は白い壁を一瞬止まって再び足早に這って行くその蜘蛛を興味深く眺めていました。

するとどこからか蝿がやってきて、私の目の前を通り抜けていこうとしました。

その刹那、蜘蛛は猛スピードで蝿の行く方向に走り始め、やがて壁を蹴って空中に飛び上がったのです。

蝿との距離は10センチ程あったと思われますが、蜘蛛は見事にその蝿を捕えました。

そして蜘蛛は下に落ちませんでした。離れ際、壁に糸を貼り付けたからです。

蜘蛛は蝿をかかえてぶら下がり、すぐ壁にとまりました。

蝿を捕獲したシーンが強烈だったので、そのあとのことはよく覚えていませんが、多分蜘蛛はその場で蝿を食べた、いや蝿の体液を吸ったと思われます(そのほうが強烈か)。

スパイダーマンのあのシーンはそんなところを真似て作られたものなのでしょうね。

蝿捕蜘蛛は座敷鷹とも呼ばれます。いい表現ですね。

複雑な環境で育ったから、あまり恋しいとは思えない故里ですが、あの小さな蝿取蜘蛛が、忘れがたい思い出の一つを、プレゼントしてくれました。 




壁を蹴り空中の蝿狩りにけり糸にさがりて落下せぬ蜘蛛 (をさむ)