わが家の裏手に、江戸期にひかれた、大きな用水路があります。


今は周囲に田んぼがほとんど無くて、本来の用途をなしてはいませんが、両岸に桜などが植えられて、市民の憩の場になっています。


そんな水路の水面(みなも)のあちこちが、小さく波立っています。


タップミーノが泳いでいるのです。外来の、繁殖力の強い、大きなメダカです。


淵には茶色の巻貝が這っています。これも外来の、その能力にすぐれた貝です。


もうこの水路には、メダカもタニシもいません。


観賞用に輸入された生物が、移り気な人間によって河川に放たれた(捨てられた)結果、生息環境を等しくする、在来種が消滅しました。


また高度成長期の工業排水や農薬による水質汚染によって、各地のさまざまな生き物が、死に絶えました(ただし農薬は、近代農業に、ある程度必要なものです)。


昔この辺りでは、貧しい子供がそのタニシを採り、業者に売って、子使い銭にしたそうです。


メダカは毎年春の訪れとともに群れをなして泳ぎ、人々の目を楽しませました。


当時水生生物は、地域の生活の一部だったのです。


豊かな現在、それらがいなくても、生活に問題は生じません(広い意味では生じますが)。


だからといって我々の身勝手な振る舞いで、罪もない生き物を、この世から消滅させていいのでしょうか。


我々人間は民族やその領土を守る為に、命をかけて戦うのに、他の生物が滅びることには、あまり関心を持たないのです。


彼らをこの用水路に呼び戻してあげたい。そんなことを思いながら、しばし水面を眺めていました。🌿✨






掌(てのひら)を離(か)れて目高(めだか)は水温(ぬる)む小川の底へ逃(のが)れゆきたり をさむ