当院は毎年17人程度の研修医師が入職する。今の時代、厚労省の医療政策でマッチングという方法で病院を選択してくるのだが、うちの病院は愛知県では人気の病院のようで優秀な医師が多い。新臨床研修制度が始まって7年ぐらいたとうか、いやはや優秀。
我々25年以上前の時代は本当位にいい加減な研修だったなあと思う。不真面目ではないが、これといった指針も目安もなく、見よう見まねで先輩医師の口や手を見ながら患者さんに申し訳けないなあと思いながら医療行為をしてたもんだ。あの当時、今のようなマニュアルやガイドライン、診療の方法などを書いた本も少なく、ましてやシュミレーション機器などは全くないし、CTやMRIといった新しい検査機器がやっと導入された時代だったから、ポンと現場に投げ出されたようなもんだった。
実は本日新人研修医にガイダンスをする機会をいただいたので、少し書きたいと思う。新人研修医は優秀で、意見もよく出るし訓練されている感じがした。自分に関してはいろいろできるような気がする。だから、これから研修医の人たちが困ることの多くは自分で解決ができない問題だと思う。というのも社会に出て困るのは、社会に出て初めてといっていいだろう、知らない人たちとの接し方、対応の仕方だから。ま、これはサラリーマン社会でもいえることだろう。しかし医師の場合は若手でも医師として患者に処置や指導をする立場に立たざるをえないことがあるから相当なプレッシャーを感じると思う。
新人ガイダンスで講義したことは、コミュニケーションが大事ということだ。
今では新人サラリーマンに対して、会社研修でさまざまなアプローチがなされている。そこでも大事な要素はコミュニケーションである。自分で何とか対処できる問題は良いのだが、医師の場合、他人の命がかかった、他人の問題を解決に導くお手伝いをするわけだから、他人とどう接し、治療効果を上げ、解決に導くかは非常に大事な試練となる。
コミュニケーションの基礎はどこに行っても同じ、学ぶ上での基本パターンがある。先ず第1印象をどう受け止められるか他人目線で考えてみる訓練が必要となる。現場での第1印象が患者が受け取る評価の8割を占めるといわれているから、馬鹿にはできないということになる。汚い白衣や行為は医師として疑われることにもなりかねない。二番目にコミュニケーションのあり方がポイントだといわれている。第1印象をクリアしてもコミュニケーションに失敗すると医師患者の信頼関係は構築できないから治療にも影響する問題だ。コミュニケーションの基礎は「あ・い・う・え・お」だ。愛情やアイコンタクト、あいさつなど様々な"あ”が思い浮かぶが基礎編ではあいさつとしよう。"い”はいたわり、慈しみの心など、考えればいろんな「あいうえお」になって異論もあろうが、新人研修医には、あいさつのあ、いたわりのい、うなづきのう、えがおのえ、おうむがえしのお、とお伝えした。第一印象やコミュニケーションのノウハウが現場でまず手っ取り早く対処できたとしても、医師に欠かせないコミュニケーションの根底には、簡単そうでいつまでも難しい共感傾聴がある。共感や傾聴はこちらの方で受け入れますよと、オープン・マインドにもっていかないとなかなかできないから難しい技法といえる。患者さんが体やこころの状況を素直に語ってくれないと問題解決に至らない。相手に寄り添いながら情報を収集する能力を上げることが問題解決に直結する。
新人研修医には、社会の現場に出ると自分ではどうにもならない対人関係の問題をどう解決・解消していくかが、知識や技術の習得以上に難しい問題であることをお伝えした。
なんやかんやで、立派に育っていくから教育って素晴らしいし、とても大事なことだと実感している。頑張れ!新人諸君。