私の好きな画家の一人。
香月泰男。
初めて香月泰男の絵を見たのは21歳の時。
偶然訪れた山口の教会でした。
 
そこで展示されていたシベリア抑留の光景を描いた
「シベリアシリーズ」。
教会の中に居るのは私ひとり。
凄惨な場面を淡々と黄土色と黒で表現したその絵は
画面のなかの色彩と空間の見事なバランス。
みる人の心に訴える力。
静かな衝撃でした。
 
その後の香月康男との再会は
その約20年後だったでしょうか。
友人に借りた雑誌に香月泰男の特集がありました。
 
そこには私の知ってる香月康男とは
全く違う世界がありました。
 
香月泰男が自宅のキッチンの壁に描いた
様々な動植物。
明るく生き生きとした色彩。
それはシベリアシリーズしか知らない私にとっては新たな衝撃でした。

 
この夏。
兼ねてから望んでいた香月泰男美術館に行くことが叶いました。
 
20年前と印象は変わらないシベリアシリーズ。
ただそこには私の知らなかった青。ただ咲く花。
群れなす鳥たち。月を抱く町がありました。
子供のように空間にオブジェが吊り下げられた再現アトリエ。
ブリキや廃材で作られた動物やオブジェの数々は
ユーモラスで優しさと物事を慈しみ楽しむ気持ちを原材料に
作られているようでした。
 
この夏。
私は少しは変われたでしょうか。
 
それまでどんなものを目に映して来たとしても
世界を見つめるキラキラした目を失わずにいられる
強さはどんな心に宿るのだろう。
 
そんなことを思う夏の日の一日でした。
 
つぼくらなみ