僕の通う小学校の通学路で火事があった。









その日は、空は紫色で、夏の生温い風に霧雨がフワフワと舞っていて、気持ちが悪い日だった。









下校時、ちょうど火事の現場に遭遇した。









消防車、救急車、パトカーが数台、野次馬が数えきれない程いた。









火事を見たのは初めてだった僕は、その迫力に足を止めた。









一軒家で3階建ての家は物凄い炎に包まれていた。









風が弱く、他の棟に火が移る心配は無いと野次馬が話しているのを耳にした。









同時に、現場の家にはまだ生存者がいるということも耳にした。









僕は災に圧倒され、恐怖のあまり身震いが止まらず、走ってその場後にした。









その日の夜のニュースで火事の事をやっていた。









あの家は父、母、息子の3人の家族で、父親(38)は死亡、母親(35)と娘(5)は重態と報じていた。









テレビの映像で現場が出ていて、家は骨組みだけ残しほぼ全焼していた。









そのニュースを見ていた母は、驚いた口ぶりで言った。









どうやら僕の弟と同じ保育園の園児で、名前はカナちゃん、母同士も顔見知りのようだった。









家に帰宅し間もなく保育園の先生から連絡網が回って来た事をふと思い出した。









母は弟と昼寝していて僕が電話に出たが、テレビゲームをやっていて、「母は外出中でいない」と適当に受け答えしてしまった。









事故の内容の電話に違いないと思ったが、今頃になって、ましてやニュースで知った後で母に言っても怒られそうだったので、知らないふりをした。















事故から3日経った今日。









僕はあの事故現場を通った。









大量の花束と、黄色い帽子に園児用の水色の服をきた子が母親らしき人と立っていた。









同じ保育園の子かと思いつつ、少しの間、少し距離をとって現場を見ていた。









子供が立入禁止の黄色いテープの下をくぐり現場に入っていった。









強い風が勢いよく吹いた後、子供が「真っ黒いウサギのぬいぐるみ」を抱えて戻ってきた。









確証は無かったが、雰囲気で理解した。









カナちゃんだ!









カナちゃんは、僕の方を向き手を振った。無事退院したんだと思い、僕もすかさず笑顔で振り返し、その場を後にした。









家に帰り、母親にその事を説明すると、母は真剣な面持ちで話をした。









僕が帰る少し前に、保育園からの連絡網で、カナちゃんは亡くなったと連絡が来たらしい。それを追うように、カナちゃんの母も亡くなったようで、現場にいたのは他の親子だと言われた。








僕もそう思い納得した。









今日、母はカナちゃん家族のお葬式に行くそうで、僕も参列しに行く事にした。









夕方になり天気が悪くなり、あの時と同じ、空は紫色で、夏の生温い風に霧雨がフワフワと舞う中、式場に向かった。









式場には沢山の人がいた。









ご焼香の順番を待ち、少しづつ前に進んだ。









順番が来て、まず目に映ったのは大きなカナちゃんの写真だった。












写真の隣には、「真っ黒いウサギのぬいぐるみ」が俯(ウツム)くようにして座っていた。