Her2Bi-Armed ATCsとは
最初に、患者さんの血液中から採血によりリンパ球を採取し、
体外で、CD3抗体とIL(インターロイキン)-2により、
Tリンパ球を活性化・増殖しておきます。
その後、HER2(ヒト上皮増殖因子受容体2型)に対する抗体と、
CD3に対する抗体による2重特異性抗体(Her2Bi)を、
体外で、上述の活性化したTリンパ球に加えて反応させます。
このHER2標的2重特異性抗体と反応させた活性化Tリンパ球のことを
Her2Bi-Armed ATCs(Activated T Cells)と呼びます。
Her2Bi-Armed ATCsの治療効果を増強するために、
免疫活性化作用のあるIL-2やGM-CSFなどのサイトカイン製剤を
患者さんに投与する場合もあります。
2017年3月10日のブログがご参考になります。
Her2Bi-Armed ATCsによる、
NIH(アメリカ国立衛生研究所)が公開している海外の臨床試験
(募集終了、試験終了、募集前、募集中断、試験中止を含む)
既存薬は主に一般名で表記しています。
癌細胞がHER2を発現している転移性乳癌
Her2Bi-Armed ATCsの静注+
Aldesleukin(IL-2製剤)+Sargramostim(GM-CSF製剤)
癌細胞がHER2を発現していない転移性乳癌
2回目の抗がん剤治療後に、
リンパ球減少目的で抗がん剤のシクロホスファミド投与
→Her2Bi-Armed ATCsの静注+GM-CSF製剤
切除手術前のⅡ・Ⅲ期のトリプルネガティブ乳癌
抗がん剤(シクロホスファミド+ドキソルビシン+パクリタキセル)治療後に、
Her2Bi-Armed ATCsの静注+Aldesleukin+Sargramostim
トリプルネガティブとは、乳癌細胞が、エストロゲン(卵胞ホルモン)受容体、
プロゲステロン(黄体ホルモン)受容体、HER2(ヒト上皮増殖因子受容体2型)
の3種類とも発現していない状態を意味します。
癌細胞がHER2を発現している
消化器癌(食道癌、胃癌、大腸癌、肝臓癌、胆嚢癌、膵臓癌)
Her2Bi-Armed ATCsの静注+Proleukin(IL-2製剤)
再発・治療抵抗性の卵巣癌・卵管癌・腹膜癌
Her2Bi-Armed ATCsの静注・腹腔内投与+Aldesleukin+Sargramostim
Her2Bi-Armed ATCsによる癌の治療効果
Her2Bi-Armed ATCs療法により、
HER2を発現する乳癌細胞の傷害作用が生じました。
(Hematother Stem Cell Res 2001;10(2):247-60、
Oncoimmunology 2016;5(3):e1055061)
Her2Bi-Armed ATCs+IL-2+GM-CSFの併用療法により、
転移性乳癌に対して、約6割で癌の増大抑制効果(SD 安定)が得られ、
生存期間中央値は約36か月で、
乳癌細胞のHER2発現量が多い場合には約57か月でした。
(Clin Cancer Res 2015;21(10):2305-14)
Her2Bi-Armed ATCs療法により、
ホルモン療法抵抗性前立腺癌に対して、約14%で癌の縮小効果が生じ、
約43%で腫瘍マーカーのPSA(前立腺特異抗原)が減少しました。
(Prostate Cancer 2015;2015:285193)
Her2Bi-Armed ATCs療法により、
HER2を発現している大腸癌細胞に対して、
トラスツズマブ(商品名ハーセプチン HER2阻害薬)よりも
強い増殖抑制効果があり、マウスで大腸癌の増殖を抑制しました。
(Int J Oncol 2014;45(6):2446-54)