私が知っている老人ホームに中学を出てすぐに介護の仕事を始めた青年が居る。
一見おとなしそうでまだあどけなさも残っているが、何かを問いかけるとしっかりとした返事が帰って来る。どちらかと言えば同じ世代の学生さんと話すよりも安心感がある、といった感じがする。
学業に関して話すと「先が読めない。」といった返事があった。「勉強も大切と思うが、自分は早く社会を知って何か役に立ちながら世の中の勉強がしたい。学歴があれば確かに上を目指せるだろうけど、自分は上はいらない。」
「将来は平凡に結婚して生活していければいいです。」と彼。
昔「平凡の非凡」という本を読んだ。
平凡に過ごすことほど難しい、といった内容だったように思う。
自分の人生を振り返ってみると確かにそう言う部分のほうが多い。平凡の定義にもよるのだろうが、幸せを追求するあまり、より以上のものや金銭的満足を追求するあまり家庭などを犠牲にし、あげくに言い訳を用意することもあった。
この青年と話すと妙に落ち着く。
しっかりと自分を表現し、毎日自分の祖父や祖母と同世代の人たちと過ごし、大人から見ればもっと他の生き方は探らないのか、と思うときもあるが、本人は満足げにひたすら働く。
ある意味私よりも大人なのかもしれない。将来はきっと平凡で幸せな家庭を築き家族と共に淡々と生きていくのだろう。
それが幸せだろう。
この青年を見るたび先行き不安より安定感を感じる。