I Feel Like a Millionaire | 8-hour workdays

8-hour workdays

音楽を中心に、気ままにブツブツ

You Think I Ain't Worth a Dollar, 

but I Feel Like a Millionaire

 

言わずと知れた

Queens of the Stone Agesの

名曲である.

 

「オレには1ドルの価値もないって?

 残念だけど,俺はミリオネアの気分さ」

 

会社の大きな発表会,

オレは壇上で閉会の辞を述べるべく,

リハーサルを行っていた.

 

既に開会の辞を述べる

若手管理職のリハは終わっていた.

活舌もよく,フレッシュで

きりっとした顔つきだ.

すっかり年老いた目つきの悪い

おっさんとは大違いだ.

 

「以上を持ちまして..

 発表会を終了いたします.

 ありがとうございました」

 

マスクをしながら,声も小さく

リハーサルを終えた.

 

すぐに自部門の執行役員が

近寄って来た.

 

「もっとハッキリとした声で

 内容もコンパクトにして,

 とにかく元気よく!」

 

若手に激しく見劣りをするおっさんに

今更何を言っているんだ.

うちの部門だって

若い管理職はいるだろうが

なぜオレをここに立たせる.

 

午後,450名程度の

工場員と役員たちで

会場は埋まっていた.

 

「只今より,○○部門発表会を

 開催します.昨今の業界の状況は・・・」

 

若手の管理職が正義の祝砲を

述べ始めた.時代遅れの自分は,

それを客席で聞いていた.

 

大砲をぶっ放す若手に対して

オレは錆びた刀を杖代わりにしていた.

 

薄笑いを浮かべた男が言うだろう.

 

「介錯(かいしゃく)しようか

 痛くないように首をはねてやるよ」

 

オレはこの数時間の会を

耐えまくっていた.

 

そろそろ出番か...

 

自分はステージの袖に向かった

壇上では若手の発表会が続いている.

 

マスクは外せだったな.

 

下を向きながら

ぶつぶつ言っていると

客席から盛大な拍手が聞こえた.

 

若手が終わったらしい.

 

「それでは○○部門××部署の

 エイト(仮名)グループ長,

 閉会の辞をお願いいたします」

 

自分はステージ中央にある

講演台に向かった.

正面を向くとライトが眩しい

 

昔バンドをやっていたせいか

この程度の観客ではあがらない.

むしろ

 

You Think I Ain't Worth a Dollar, 

but I Feel Like a Millionaire

 

壇上の自分はそんな感じだった.

 

さあ,オレの咆哮を聞け!

 

「只今より閉会の辞を

 述べさせていただきます.

 本日は...」

 

オレは何も読まない.

暗記は言葉でなく

シーンを浮かべている.

そこに当てはまるフレーズは

神のみが下ろしてくれる.

 

「生産部門に置きましては

 2023年は原材料の高騰・・」

 

本日の発表の切り抜きを用いて

総括を続ける

 

「品質管理の部門からは,

 昨今の業界内での・・・」

 

You Think I Ain't Worth a Dollar, 

but I Feel Like a Millionaire.

 

常に前を向き,

照らすライトを目線でぶち抜いた.

 

オレは下を向かない.

聞かせてやるよ,しっかりとな.

 

「以上を持ちまして,2024年度の..

 ○○発表会を終了します,

 ありがとうございました!」

 

深々とお辞儀をすると同時に

大きな拍手が沸き起こった.

 

オレはついにミリオネアになった.

1ドルの価値しか無かった自分がだ.

 

ステージ袖から出口に向かう

 

「すごいですね,良かったですよ!」

「セリフ覚えていたんですか?

 完璧でしたよ!」

 

自部門の何人かが声をかけて来た.

 

You Think I Ain't Worth a Dollar, 

 

だったよな.オマエら

変わり身,早えーじゃん

 

gimme some more

gimme some more

gimme some more

 

もっとくれよ,

アハトロ のテキーラを

 

もうぶっ倒れさせてくれよ.

疲れたよ,何もかも