溜め息混じりの僕を許してね | 8-hour workdays

8-hour workdays

音楽を中心に、気ままにブツブツ

会議室が少なすぎる.

テレワークの時は

こんな心配はなかった.

出社するようになって,

あっという間に埋まっている.

 

「うん?何だこの予約?」

 

予約システムを見ると

23日(金)0:00~24日(土)0:00

○○会議(仮)

と登録されている.

 

使うんか?本当に.

 

予約者は他部署であったが,

同じフロアーの人であったため,

聞きに行くと,

 

「今日彼女は,テレワークで出社していません」

入社2年目の女性が答えた.

 

「あの,金曜日の予約なんですが,

 本当に1日使いますか?

 (仮)とか入っているんですけど」

 

彼女は急いでスケジュール予約を開け,

確認を始めた.

 

「えっと~,これは確か来週になったので,

 ないと思うんですけど

 確認してみますが,

 あっ,今リモート会議中みたいです」

 

「でしたら,別に明日でもいいですから」

 

「訊いてみます」

 

そのことを頼んだ後,

自席に戻り,別の候補日も探し始めた.

 

「うーん,やはり無いか」

 

スケジュールに悩んでいると,

フロアーの端からさっきの彼女が

自分のところにやってきた.

 

「あの~,チャットで問いかけをしているんですが,

 反応がないみたいで,何時ぐらいを

 ご希望でしょうか?」

 

その顔は紅潮し緊張ぎみであった.

 

「彼女会議中ですよね.

 いいですよ明日でも,全然.本当に.

 彼女が押さえている間は 

 誰も予約ができませんから

 そのままでもいいですし」

 

「あっ,すいません.で何時ぐらいを」

 

「あっ,10時から1時間ぐらい」

 

「午前中でいいですかね」

 

「ええ,でも無理しないでくださいね」

 

彼女は軽く頭を下げて,

席に戻って行った.

 

昨日ブログに書いたが,

きちんとコミュニケーションを

とれるじゃないか.

自分は評価者でも何でもないのに.

 

本当に申し訳ないことしたな.

 

帰宅時,

そのことが頭をよぎっていた.

マスクをしたゴルゴ13みたいな男に言われたら,

24,5の女性は,怖かっただろうなと.

そんなことを思い,最寄り駅から歩いていると

松屋のポスターが目に入った.

 

「お肉たっぷり牛鍋膳?」

 

これ食って頭切り替えるか!

 

店に入ると客はほとんどいなかった.

カウンター席に座ると,

店員が水をもって近づいてきた.

 

「イラッシャイシャセ!」

 

訊きなれない言葉と

アクセントに違和感を覚え,

名札を見た.

どうやら中国系の方だ.

偉いじゃないか,こんな異国の

慣れない土地で,片言の日本語で

給仕と料理の両方をさせられている.

 

「ギューナシェ,ゴシェンシェシュネ」

 

新喜劇の諸見里張りの活舌で

注文を繰り返した.

 

彼はすぐに厨房に戻り,

調理を始めた.

 

5分後

 

「オマシャシェ,シュマシュシャ」

 

そう言って牛鍋膳を置いた.

コロナの影響でカウンターには

箸立てはなくなり,

割りばしと1本のつまようじが

お盆に添えられていた.

 

「さてと,うん? あれ?」

 

自分の認識が間違っていたのか?

 

店内で牛鍋膳のポスターを探した.

 

うん?

 

ポスターがない.

仕方なくスマホで松屋のサイトを調べた.

 

やっぱり!

 

勢いづいて立ち上がると,

割りばしが床に落ちてしまった.

音を聞いたチャイナ店員は

目をこちらに向けた

 

「あの~,割りばしを落としてしまって」

 

すぐに替えの割りばしを持ってきた.

 

「ちなみにこれって,卵無いんでしたっけ?」

 

「タ・マ・ゴ?? あっ!タマゴ!」

チャイナ店員は失われた記憶を取り戻し,

大きな声で叫んだ.

 

「タマゴ,アリマシュ!」

そう言って冷蔵ケースから取り出した

 

「モウシュワケ,ゴシャシャシャ!」

 

~ 言葉は転がり続け 

  想いの丈を通り越し

  上手く伝わるどころか 

  掛け違いのボタン 困ったな

  ああいつもの君は 振り向いて笑う

  溜め息混じりの 僕を許してね ~

 

彼は恥ずかしそうに笑っていた.

 

ま,いいか.