ARCANA PROJECTさんが歌劇「Musica Historia」を開催するとの告知から始まりました。
オリジナル楽曲と演劇の融合を楽しむに際して、あらかじめ舞台現場に触れておこうと考えます。さらに、でんぱ組.incにおけるご同期である高咲さんがアリスインプロジェクトの舞台「ダンスライン」にて初めて板を踏むと伺っていましたので、これも何かのご縁。
全5日8公演のうち一つでも見られたら良いくらいの気持ちで気楽に臨んだのですが、結局中日の第二部と最終日の第二部の2公演に足を運び、そのいずれも満喫して帰ることとなります。
部活動及び生徒会を中心とした人間関係を物語の舞台としています。スマートフォンを使う描写がありましたので、現在日本をベースにしたものと認識しています。学年の表示が明確には無かったように記憶しており、高等学校をイメージして拝見しました。
初舞台の高咲さんと舞台女優さんのお二人が共同座長として姉妹役を務めることは伺っていました。演劇部員である元気な妹"美環(みかん)"をご担当で、ステージにおけるご本人の立ち回りや、ライブにおける担当カラーオレンジとも極めて整合します。
開幕では全員がご登場になり、"見えるものと見えないもの"から始まる一連の文章を一説ずつ順次吟じるところから始まります。この文章自体は劇中劇における未完の一節であり、かつこの物語のテーマを端的に示すものでもあります。
物語としては、心残りのために現世に縛られてしまったお祖母さんに妹が出会い、姉妹で力を合わせてその心残りを探すよう頼まれるところから始まります。探し物を求める過程で、活動休止中の演劇部と停滞中のダンス部そして規律重視の生徒会という意見の一致しがたいハズの三派が一つに纏まり、姉妹の意思がようやく疎通する展開に至ります。
表題が示すとおり"ダンス"が物語の鍵を握る要素となり、ダンスバトルもあって圧巻の見せ場となっています。これに加えて、団結することの大切さを感じ取った点に感銘を受けました。外交的で周囲を巻き込む妹と対照的に、気弱で孤高を好む姉という構図が冒頭から示されています。探し物の依頼を受けた妹は自業自得で起こしたトラブルを理由に姉に嫌われているものと思い込んでいるため、余人への対応とは逆に積極的な関与を避けようとしています。姉妹で力を合わせることが依頼内容に含まれていますのでコミュニケーションを試みますが、なぜか(物語の核となるネタバレになるので明示はしません)本人は無自覚なまま一方通行に終始します。
一方で姉は姉なりの考えから、妹の行動様式をなぞろうと努力する果てに見事に咀嚼し、さらにその人徳をもってバラバラになっていたグループを一つにまとめて海外でのダンス公演を見事成功へ導くという流れを辿ります。姉妹で相互にリスペクトしていたという要因が根底にありつつも、トラブルを恐れず皆で協力することを選んだことがとても印象的なシナリオとなっています。
回を重ねるごとに完成度が増していて、千秋楽に至ってはアレンジやカーテンコールを楽しむこともできて満足です。群像劇の性質上、見るべきところが多くて両目でもとても足りないほどでしたが、TV放送や円盤化の予定もあるとのことなので、是非検討したいところです。
文責 えふ