サザンの好きなアルバム曲について記事を書いていたのですが、前回、あまりの曲数に執筆途中で力尽きてしまったしべりあ。


今回は気をとりなおして、『タイニイ・バブルス』『10ナンバーズ・からっと』、『熱い胸騒ぎ』から特に気に入っている曲をピックアップして、ご紹介させていただきたいと思います!



①タバコ・ロードにセクシーばあちゃん


https://youtu.be/g_GLD6Lgmrc


1980年発売のアルバム、『タイニイ・バブルス』収録曲。

コンピューターおばあちゃんならぬ、タバコ・ロードのセクシーばあちゃん。


コミカルなタイトルですが、めちゃくちゃ渋かっこいい名曲です。


数多のラブソングが世に出されていますが、老齢のカップルを描いた曲はそうそうないのでは。

中島みゆきさんの『糸』のように、人生を通しての愛などを歌った作品はありますが、これは歌詞中にもある通り、”90years old”…90代の「セクシーばあちゃん」の、ファンキーじいちゃんもとい、「別れた夫」への恋しさが吐露されています。

桑田さんの掠れた、良い意味で若さを感じさせない歌声も、この曲のコンセプトに綺麗に合致していると言えるでしょう。


既に貫禄さえ感じさせる歌い節ですが、このアルバム、サザンのオリジナル作品としてはまだ3枚目なんですよね。

これでまだ若手のバンドだと言うのだから末恐ろしい。




②TO YOU

https://youtu.be/fkPQ-b2o2uo


こちらも『タイニイ・バブルス』から。


初っ端の「俺がいなけりゃ沈み込むようなアンタがいいね lady いつの日もTelephoneでキッス 夢のような気持ちで」からよどみなく流れるように歌詞がメロディーにピッタリハマっていて、聴いているだけで幸福な心地良さが感じられます。


サザンというバンド、もとい桑田佳祐さんの作詞の特徴として、文章としての完全性よりもメロディーとの親和性に比重を置いた言葉選びが挙げられるかと思いますが、初期は特にその特徴が顕著でした(最近の桑田さんの楽曲…特にシングル表題曲は昔に比べて、歌詞によって伝えんとしている意図がかなりハッキリしています)。


現代でこそ、そういう「意味よりも音優先」で曲作りを行うバンドが増えてきましたが、桑田さんは「言葉の持つ音楽としての本質を直感的に把握する」能力・センスが桁違いで、これはもう天才的と言って良いほどです。


しかも、彼の場合は「音優先」だからと言って、決して文章力や文学性に欠けているわけではありません。

むしろある程度豊富な語彙力を持っているからこそ、音ひとつひとつに対して最も適切なワードやフレーズを選ぶ事ができていると言えるでしょう。


『TO YOU』は桑田さんのメロディーメーカーとしての、そして作詞センス両方を楽しめる隠れた名曲だと思います。




③働け・ロックバンド

https://youtu.be/X7zxLchlwAk


『タイニイ・バブルス』収録。


初期サザンの最もたる魅力の1つである、無骨な熱さが凝縮された曲。

デビュー当時の、コミックバンド的な扱いなどに対する本音を吐露した内容が書かれています。


確かに、当時の映像などを観ると、夜ヒットでさえ「ひょうきんベストテンか?」と思えそうな程はちゃめちゃな演出や衣装でデビュー彼らを歌わせていました。


彼らも、そういう演出に乗っかって大騒ぎをしてはいましたが、バンドマンとして思うところがあったのは当然の事でしょう(むしろそういう騒ぎ方は、緊張を見せないためや、求められている役を演じているだけのように見受けられます)。


桑田さんの歌声は全然若くないのですが、この曲は全開の若さが感じられて、好きです。




④お願いD.J.

https://youtu.be/7bh5EFPVKco


1979年発売、『10ナンバーズ・からっと』のリード曲。


このピアノのイントロが好きすぎて、ここだけ何度もリピートして聴いてしまいます。

数あるアルバムの中でも、こうも心を鷲掴みにしてくるイントロを持つリード曲はそうないと、勝手に思っているほどです。


間奏部で、オオカミの鳴き声を真似たような桑田さんの声が挿入されているのですが、これはウルフマン・ジャックというアメリカのDJを真似たものらしいですね(当時は有名な方だったのでしょうか?)。




⑤ラチエン通りのシスター

https://youtu.be/c0WDCrYkzAA


多分、私が『10ナンバーズ・からっと』で1番好きな曲。

初期サザンの良さを凝縮したような、若さと無骨さがきらきら光るバラードです。


「彼氏になりたきゃどう言うの」なんて、情けなくも聞こえてしまう一言かもしれませんが、このなけなしの、情けなくもあるフレーズが、しんみりと胸に沁み入って泣かせてきます。

そうだ、恋ってそんな綺麗だったりカッコ良いものなんかじゃなくて、必死でひたむきで、たまに情けないもんだったなぁって、この曲を聴くと思い出されるのです。




⑥別れ話は最後に

https://youtu.be/O4f_EL0tAB0


サザンの記念すべき1stアルバム、『熱い胸騒ぎ』収録の一曲。

この頃のサザンは、まだ学生の雰囲気が名残る、若いバンドだったのですが、こういうボサノヴァ調のバラードが入っているあたり、桑田さんの作曲能力の幅の広さが既に光っていると言えるでしょう。


歌詞は、やはり1stアルバムというだけあってか妙な初々しさがあり、別れ話を予感している男の心情が「雨が降ってるのに 空は晴れている まして今夜は雪が降る」と、ある意味清々しいほどのどストレートさで綴られています。


こういう、所々に桑田さん独自の作詞の色だったり、作曲の幅だったり…今では彼のカラーとしてはっきり認知されている魅力が、まだ未完成のものとして所々でやや不安げに揺れているような感じが、それがいかにも1stアルバムという感がして、私は好きなのです。




⑦恋はお熱く

https://youtu.be/F9MdHfiwyv4


こちらも『熱い胸騒ぎ』収録。


サザンと言えば湘南、湘南と言えば海! のイメージですが、私が海辺に行くと1番聴きたくなるサザンの曲は、実はこれだったりします(自分でもなんでこれ? と思うけど。数ある海ソングから、何故これ?)。


一人称は「俺」なのですが、歌詞が基本的に女性めいた口調で綴られているので、シンパシーを感じやすいのかもしれません。


ひとりで渚に立って 

寄せる波に吐息だけ 

早いものね もう日が暮れてきたわ 

帰り道がつらい


誰でも恋するように 俺もあなたに恋した

早いものね 時のたつのだけは

どこで何するやら Oh baby


今でも思い出せば 涙がこぼれるだろう

小粋な言葉はいらないけれど

夢からさめずにいたいだけ



…なんでしょう、描かれているのはなんて事のない、それこそ「誰でも恋するように」恋したというだけの、ごく平凡なラブソングなのですが…


『別れ話は最後に』にも通じる、初々しさと言うか、ある種の素朴さ、素直さがメロディーにも歌詞にもあって、それが琴線にそっと触れてくるんですよね。

聴いているとなんだかほっとさせられます。




⑧女呼んでブギ



『熱い胸騒ぎ』収録曲。


また、サザンがデビュー前のコンクールで披露した曲でもあります。


そして、しべりあが高校生の頃、何をトチ狂ったのかカラオケで披露し、クラスメイトをドン引きさせた曲でもあります。

初っ端から「女呼んでもんで抱いていい気持ち」ですからね。女子校育ち、普段はジャニーズばかり聴いていたクラスメイト達には当然刺激が強すぎました。


サザンのある意味での真骨頂とも言える、脱力系お色気ソング。

この突き抜けたエロはいかにも若さ特有! って感じがしますが、桑田さん、わりと最近の曲『天国オンザビーチ』でもこのノリを貫いているから、いやもう、凄いです。

※参考までに『天国オンザビーチ』

アラ還(当時)が書いたとは思えない(褒め言葉)歌詞の曲でアミューズの豪華メンツが集まって騒ぐというカオスなMV



ちなみに、この曲を披露したデビュー前のコンクールには、後のラッツ&スターも出場していました。

この時、鈴木雅之さんはじめラッツのメンバーはサザンをはじめとした他参加グループに圧倒され、「もっとシャネルズを強く印象づけるものはないか」と、グループとしてのスタイルを模索し始めたんだそうです。

結果、顔を黒塗りにしタキシードを纏い、振り付けも自分達で考えるスタイルへと行き着いたのだとか。


いやしかし、このコンクールの音源聴きましたが、桑田さんも鈴木さんも大学生の声とは(良い意味で)思ませんでした。






以上、今回は『タイニイ・バブルス』『10ナンバーズ・からっと』『熱い胸騒ぎ』からお気に入りの曲を紹介させていただきました。


サザンファンとしてはわりとスタンダードと言うか、順当な選曲かと思うのですが…皆さまのご存じの曲はあったでしょうか?


サザンはアルバムにこそバンドの最たる魅力が詰まっているので、この記事をきっかけに聴いてくださる方が少しでもいてくださったら嬉しいです(^^)