以前、ブログの読者の方から西村知美ちゃんの歌唱について「浅田美代子の後継者」というコメントをいただいた事があり、「なるほどなぁ」とひどく納得させられたことがあります。


とろりんのあのデフォルトで裏声っぽい、なおなつやや不安定な歌声は確かに浅田美代子さんと通じる部分がありますし、目がぱっちりしていて可愛らしい顔立ちなのも共通しています。



しかし、「浅田美代子の後継者」と呼ぶべきアイドル…正確に言うと、「浅田美代子の後継者としたかったであろうアイドル」が実は他にも、88年にデビューしていたのです。


それが、この方。

岡本南さん。




かつて浅田美代子さんが出演され出世作となったドラマ「時間ですよ」の続編、「時間ですよ たびたび」に出演されていたアイドルで、88年にこのドラマの挿入歌でもあった『風とかくれんぼ』でレコードデビューを果たしました。


『風とかくれんぼ』
作曲:小林亜星
作詞:川村真澄



初めてこの曲を聴き、また、岡本さんが歌っている映像を観た時、率直に言いますと、私はやや呆然とさせられました。

88年…Winkや静香といった、バブリーな輝きを放ったアイドル達が第一線で活躍していた時代に、勿論「あえて」だとは思うのですが、この曲と衣装のセンス。
到底売れるとは思えません。

衣装は、80年〜82年あたりによく見たタイプのもので、正直この88年という環境の中では浮いていたのではないかと思います。

曲も、モロに浅田美代子さんの『赤い風船』を意識した作りで、ドラマの挿入歌ということで意図的に70年代の雰囲気を演出したのだと思いますが、「第二の浅田美代子にしよう!」という事務所の意向が見え透いているようで、観る側としてはちょっと気持ちが引けてしまう。

何より、「続・浅田美代子」的なアイドルにしようとしすぎていて、岡本さん本来の個性や魅力が隠れてしまっている気がしました。


動画で拝見する限り、岡本さんは顔立ちも浅田美代子さんやとろりんのような可愛い系ではなく、どちらかと言えば綺麗系の美人さんだと思います。
背も高くてスタイルも良いし、浅田美代子さん・とろりんが圧倒的に妹っぽかったのに対し、岡本さんには年上のお姉さん的な雰囲気があり、またそれが彼女の魅力だとも感じました。


事実、89年に発売された3thシングル『DON-MAI』を歌っているこの動画では、『風とかくれんぼ』時より時代に合ったスタイリングになっていますが、これは彼女にとてもよく似合っていて、岡本南という女の子の良さが真っ当に発揮されているように思います。
めちゃくちゃ美人さんですね…。

『DON-MAI』




また、この動画で更に気になったのは、彼女の歌声と歌い方です。

『風とかくれんぼ』の時はさほど高い音域でない歌唱も裏声気味に歌っていたのですが、この『DON-MAI』の生歌唱では、サビの高音以外はほとんど地声で歌われています。

歌い方に関しても、事務所が浅田美代子さんを意識して、本来であれば地声で歌える音域でも裏声気味の歌唱をするようプロデュースしていたのではないか…と、邪推めいた推察をせずにはいられません。

岡本さんは地声もとても綺麗だし、こういう点においても、ネクスト浅田美代子を狙う必要はかったのでは…と思ってしまいます。

音程の不安定さなどは確かに浅田美代子的ではありますが、ドラマの出演と音痴の類似性以外に、正直岡本さんと浅田美代子さんの共通項ってない気がするんですよね…。


『風とかくれんぼ』の売り上げが予想より低かったこともあり、ネクスト浅田美代子路線に限界を感じ始めたのか、2thシングル『ゆらゆら』のジャケ写は『風とかくれんぼ』時と大きく趣が変わり、「いつの時代だよ」とツッコんでしまいそうになった素朴路線から、88年らしいバブリーでパッキリしたメイクと衣装に変わっています。

『風とかくれんぼ』ジャケ写
『ゆらゆら』ジャケ写

また、この『ゆらゆら』からは楽曲自体も時代に即した作りになっています。
結構早々に浅田美代子路線は諦めたのかもしれません。

同じように地声を封じられ既存のビッグアイドル路線を追従させられたアイドルとして、志村香さんがいますが、彼女が4枚目のシングル『危険がいっぱい』までずっと桃子的な歌い方をさせられていた事を考えると、だいぶ早い見切りのつけ方だなと思います。




さて、ここまで岡本さんのプロデュースについて長々と語ってきましたが、私から見た彼女の魅力についてまとめると、


・美人(綺麗系)
・スタイルが良い
・優しそうで穏やかな空気感
・やや不安定な歌声
・音を外した時のはにかんだ笑顔

などが挙げられます。

音痴フェチとして、岡本さんの不安定な音程は聴いていてとても癒されるタイプのものです。
音を若干外した時の、「やっちゃった」みたいな表情も可愛い(80年代終盤〜氷河期って、音を外した時に申し訳なさそうな表情をする子が80年代初期に比べかなり増えたように思います。三井比佐子ちゃんも川田あつ子ちゃんも森尾由美ちゃんも、どれだけ音を外そうが知らぬ存ぜぬの笑顔で歌っていたのに)。
そして、お姉さん的な綺麗系の美人だけど癒し系、というギャップも個人的にはポイントが高い。

ただ、浅田美代子路線ではなく最初から、これらの生来の魅力を素材にプロデュースしたとしても、88年という時代にウケるアイドルにするのは難しかっただろう、とも思うのです。

88年に流行っていたのは、前述したようにWinkや静香。
特に静香の活躍にも表れているかと思いますが、「可愛い」「おしとやか」よりもどちらかと言えば「カッコいい」「強さ」などがアイドル、女の子の魅力として支持されていた時期でした。
ユーロビートも、Winkがそれを「可愛い」へ昇華させましたがもともとはカッコいい系寄りのジャンルです。

その時代の雰囲気の中で、岡本さんの「優しそうで穏やかな空気感」は時代のニーズとあまりマッチしていたとは言い難い。
同じ綺麗系の美人でも、ミポリンなどは気の強そうなキャラクター性を滲ませているのですが、岡本さんはどう見ても気が強そうなタイプではなさそうですし…。

結果的に、ドラマとの関連性や裏声の柔らかさ、音痴のタイプなどのあまり多くはない共通点に乗じて、「ネクスト浅田美代子路線」という、当時の他のアイドルとは異なる売り出し方へ舵を切っていった事務所の判断も、仕方がなかったのかな、とも思えます。

多分、他の数多のアイドルと同じく、時代さえ違えばもっと売れた…少なくとも、売り方の幅が広がったのではないでしょうか。

あと、彼女はどうやらあまり地声の音域が広くないようなので、彼女の音域に合わせた曲があてがわれていれば良かったかな、とも思います。
もっとも、80年代晩年って、アイドルの音域やキャラクターに合わせた楽曲って少なくなっていっていた時代なのですが…。



以上、今回は岡本南さんをレビューさせていただきました!

最近は今まで以上に80年代終盤〜氷河期のアイドルにハマっています。

オーラとか華やかさでは80年代前期組にどうしても劣ってしまうところがありますが、現代でも通用するような美人さんが多いですし、この時代のアイドル特有の魅力もいうものがやはりあると思うのです。


またぼちぼち他のアイドルもレビューしてまいりますので、よろしくお願いいたします(^^)